No.212 寒菊

薄っすらと雪が積ったように、白い生姜風味の砂糖がかかっている。これは『寒菊』というおかき。さくっとした食感で、甘塩っぱくて優しい味だ。おかきは2枚ずつ、菓子名の入った紙に包まれている。福岡県豊前(築上町) で、寛政年間(1789年〜1801年)に小倉藩主に献上したという伝統のある銘菓だそうだ。
ニ段重ねの蓋物は、細かい石が混ざった釉薬を掛けていて、ざらざらした質感が面白い。表面は木版画の版を削った時のような彫刻刀の溝が変化をつけている。器本体はもう一段下に、もっと大きな高さのあるパーツが組んでいたと思われる。が、壊れてしまったのか、昔我が家に来た時には既にこの薄い円形のニ段と蓋だけだった。資料を探せば見つかるかも知れない。器は第12代 楽 吉左衛門 (弘入) と思われる。
この2段の蓋付をどう使ったら良いからしら、と迷ってお菓子を盛ってみた。下の段に寒菊、上の段にはお干菓子を盛った。暖かい部屋でお茶を淹れてこうしてお菓子をいただく、と言うのも冬の楽しみのひとつかもしれない。

器 楽 砂薬蓋物 径12cm 高7,5cm(3,8+3,8+蓋)
作 楽 吉左衛門