No.279 おいなりさん

おいなりさんは、時々急に食べたくなる事がある。味の沁みた甘塩っぱいお揚げに酢飯。それだけなのに、なぜあれほど美味しいのだろう。以前、京都に行った時には寄るおうどん屋さんがあった。うどんと丼物のお店だけれど、なぜか京都はそんなお店の店名はどこも “○○餅” 。発祥は餅屋だったのだろうか。 “○○餅” と名の付くお店は古くから地元に根付いたお店で、観光客の多い繁華街ではなく住宅の多い地域。昔よく行っていたそのお店も、近所の方が気軽に食べに来るお店で、ご家族でやっていた。
京都のおうどんは、讃岐系のコシのある麺とは違ってあまり太くなくて柔らかい。もちろんうどんも美味しいのだけれど、私はそこのおいなりさんが特に気に入っていた。サイドメニューの位置付けで、三角の小さめのおいなりさんが2つ、甘酢生姜と一緒に小皿に載ってくる。酢飯には白胡麻が入っていた。
そのお店がしばらく前に閉店し、そのおいなりさんも食べられなくなってしまった。残念に思っていたら、京風のおいなりさんで使う正方形の油揚げを見つけて、作ってみようと思い立った。
おいなりさんはこれまでも作った事があるけれど、お揚げを煮て味を染み込ませるには結構な手間がかかる。せっかちに作るせいか、思っているおいなりさんが出来たことがなかった。でも、今回はレシピ通りに手間をかけてお揚げを煮て、お店の味には届かないものの、そこそこ満足の行く味が出来た。
つい欲張って酢飯を詰め込んで、大きめのおいなりさんになったけれど、お店をイメージして敢えて小さめのお皿に盛ってみた。使ったお皿は箱に『土器皿』とある。永楽 妙全 のものだ。5枚組で、赤っぽい土に鉄釉でそれぞれに絵がわりで描かれている。土器の名の通り高台は無く、丸い板を皿の形に窪ませた素朴な作り。使った皿には太い枝の向こうに寺院の塔のような建物が覗いていて、京都の風景が思い浮かぶ。

器 土器皿 五枚組 径 14cm 高2,5cm
作 永楽窯 永楽 妙全
















