カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.226 若竹煮

 今年も筍が届いた。大きな鍋2つ使って下茹でし、ひと晩置いた。たっぷりのお出汁で山ほどの若竹煮を作った。庭の山椒はかなり育っているけれど、まだ出立ての小さい葉を選んで香りを添えた。

緑釉のどら鉢に盛ってみようと、筍は大きめにした。この、北大路 魯山人 の鉢の迫力に見合うように盛り付けるのは難しい。大胆に、と鉢の声が聞こえたけれど、中々思うようには納まらない。考えていたよりはこじんまりとまとまった。試行錯誤しながらも、この鉢にどう盛ればもっと素敵だろう、と学ばせて貰った。

 箱書きには “織部 鉢” とだけある。見込みの向こう側に口から縦に “入” が有る。これは窯傷で、後から入ったものではなく金や銀の継で直しもせず、そのままを楽しんで使われて来たようだ。魯山人はこの器を鉢としているが、その後のどなたかがお抹茶の水指に見立てたようで、真塗りの漆の蓋が添っている。織部焼の緑の釉薬一色だけを使ったシンプルな鉢だけれど、口周りの釉薬は垂れて薄く、見込みの底の溜まった緑はとても深い。胴に幾重かに回された窪みや、見込みの渦巻の凹凸に釉薬の濃淡が美しい。

器 おり部 鉢  径21cm 高9,5cm

作 北大路 魯山人