No.252 エスプレッソ

金木犀が真っ盛りと言うのに、コートが必要なほど急に冷え込んだりする。年々秋を楽しむ時間のゆとりが無くなっているのが残念だ。
暑い間はオーブンを使うのを敬遠したけれど、今はその熱が恋しい。八百屋の店先で紅玉を見つけて、久しぶりにケーキを焼きたくなった。甘い林檎の香りがキッチンに立ち込こめる。なんとも言えない幸福感を感じる。度々作っているこのケーキは作り方がとてもシンプルで、失敗も無く気に入っている。
カラメルの程よい苦味と甘味にバターが加わって、紅玉の酸味を引き立てる。飲み物はコーヒー、と思ったけれど深煎りの豆が有ったのでエスプレッソ風に濃く淹れた。使った器は Susie Cooper (スージー クーパー)。このデザインは Susie Cooper の中でも初期の物で、バックプリントは帆船。彼女が自身の陶器ブランドを始める以前 “グレー&クラウン社” に居た1921年頃に使われたスタンプだそうだ。
この手描きの花柄は、以前の回で大皿や鉢など何度か登場している(2021/2/26 No.9 と2021/8/13 No.33) けれど、この小さなカップにも変わらぬ大きさの花が描き込まれている。時代はアール・デコ。この頃の Susie Cooper のデザインは色を面で表現する筆使いの物が多く、使っている色も強い。その後のSusie Cooper ブランドの優しい雰囲気の器とは趣が違っている。
写真のデミタスのカップ&ソーサーと皿は、絵のタッチと色が同じなので一見揃いの様に見えるけれど、実は柄は違う。バックプリントも、同じ帆船だけれど両者で少し違っていて、カップ&ソーサーの方がより古い時代に作られた物と思われる。今から100年昔の英国で、紳士淑女が食後のコーヒーを楽しんでいたのだろうか。

器 Susie Cooper ハンドペイント デミタスカップ&ソーサーと小皿 カップ径5,2cm 高5cm ソーサー径11cm 高2cm 小皿径13,5cm 高1,3cm
作 Susie Cooper (England)