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うつわ道楽

No.126 牛すじの赤ワイン煮込

 ひと昔前まで、関東の精肉店で牛すじを見かける事はまず無かったけれど、嬉しい事に最近は取り扱うお店が増えた。牛すじは下処理が少し面倒だけれど、脂肪も少なく煮込むと良い旨味と蕩けるような食感で大好きな食材だ。少し時間をかけて赤ワイン煮込を作った。

香味野菜をみじん切りにしてよく炒め、赤ワインを加えて牛すじを煮込む。私は水煮のトマトとデミグラスソースも加えてコクを増す。食べる前に、茹でたポテトと人参、マッシュルーム、ブロッコリーを加えて一緒に温めて盛り合わせ、ボリュームたっぷりな一皿になった。

さて、どの器に盛ろうかと考えていて思い出した。深さが有って縁の幅が広く、まるで洋食器のスープ皿の形をしている。古染付ではあまり見た事がない形で珍しい。呉須も素地の色も濁っていて、古染付の中でそれほど良い上がりではないけれど、とても使いやすい。以前はよく使っていたのに、仕舞い場所を変えるとつい忘れがちになる。少し重めの赤ワインと一緒に楽しんだ。

器 古染付皿  径21cm 高4cm

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No.125 アイスミルク

 季節の変わり目は、天候も気温も変化が激しい。ここ数日は真夏のような暑さで、冷たい飲み物が欲しくなった。久しぶりに、この鯛がたくさん泳ぐコップを出して白いミルクを注いだ。薄いガラスの中に、口を大きく開けて泳ぐ可愛らしい鯛の模様が浮かび上がる。

これは一昨年の夏、2021年8月のNo.34で掲載したのと同じ、江波 冨士子さんの「ムリーニ」という手法のガラスコップで、我が家に2つ在るもうひとつの方だ。その回にも書いていたが、ローマ時代に作られていたガラスのムリーニという手法を、江波 冨士子さんが独自の技術で再現して作られている。

 同じ大きさの鯛が泳ぐこのコップの風景は、まるで水槽を覗いているかのよう。No.34の回で使った、大中小の大きさの違う鯛が泳ぐコップは、このコップをいただいた後にもうひとつ欲しくて、お願いして作っていただいたもの。どちらのコップも、使う度に懸命に泳ぐ鯛の姿に気持ちが和む。

器 鯛 ガラスコップ  径8cm 高9,5cm

作 江波 冨士子

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No.124 洋風肉じゃが

 今が旬のエンドウ豆を沢山いただいた。友人のご実家が家庭菜園で収穫したものだ。今までにも胡瓜や馬鈴薯、玉葱など色々頂いた事があるが、どれも美味しく素人とは思えない出来栄えで驚く。今回はこのスナップエンドウの他に、絹さやをいただいた。どちらも私の好物。ちょうど新じゃがと新玉葱が有るので、スナップエンドウを使って洋風の肉じゃがを作る事にした。春野菜は甘くて香りが良いから、味付けは甘味を加えずにシンプルにしたかった。精肉ではなくてベーコンを使う事で、燻製された脂と香りがコクを増す。市販のブイヨンを少し使って、小さいローリエの葉を一緒に煮込み、塩味で仕上げた。

 器は古染付で、見込みの中央にだけ模様が描かれている、ほぼ真っ白の白磁の鉢。しかし、よく見ると内側に陰刻で幾何学的な模様が彫られている。鉢の口に近い上の部分は生地も薄いため、陰刻は自然に消えているけれど、胴の辺りには少し青みがかった釉薬が僅かな陰刻の模様を浮かび上がらせている。口の部分だけもう一回り開いている輪花の縁は、当時の良質ではない釉薬のせいで爆ぜてしまって虫食いだらけ。でも、それがこの白い鉢にいっそうの古染らしさと風情を加えている。

器 古染付鉢  径15,5cm 高9,5cm

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No.123 シーフードグラタン

 グラタンが食べたくなった。よく作るのはチキンだけれど、今日は近頃手に入りやすいサーモンと帆立貝柱でシーフードにした。幼い頃、食べず嫌いで偏食だった私が、唯一安心して外食で食べられたのは、チキンマカロニグラタンだった。今でもバターの効いた濃厚なベシャメルソースを使った料理は大好きで、グラタンの他にもクリームコロッケやラザニア、ギリシャ料理のムサカなど、ちょっと面倒だから滅多に作らないけれど、時々とても食べたくなる。

バターと小麦粉を弱火でしっかり炒めて、牛乳を加える。ソースは粘度があるので、沸くとまるでマグマのようにグツグツと大きな気泡がはじける。前にアルバイトで勤めたデリで、この時にしっかり火を通すのがコツ、と習ったので火傷に気をつけながら、焦げないように木べらで混ぜてしっかり火を入れる。グラタンは焼き上がりの香ばしい香りと表面のカリカリの食感で、満足感を感じる料理だ。

オープンに入れるので、グラタンは耐熱容器で作るが、熱い容器を載せるアンダープレートにちょっと華やかな皿を使った。年代は不明だが、多分それほど時代のある皿ではないと思われる。メーカーは英国のMINTONだが、ニューヨーク、5thアベニューに在った食器店のために作られた物らしく、バックプリントに記されている。調べたがその食器店は今は無いのか、判らなかった。

縁に回した金の彩色は、時を経てもほぼ新しい時と遜色なく残っていて豪華な印象、ブルーのエナメル質の小花は透明感が有って美しい。我が家の中では華やかで、少し毛色の違う器だけれど、時にはこんな明るさも気分が変わる。

器 金線小花ケーキ皿  径20cm 高2cm

作 MINTON England