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うつわ道楽

No.144 栗と鶏の煮物

 例年になく特別に暑かった夏は、まだ暑さを保ったまま。とは言えもうすぐ10月で今日は中秋の名月。生鮮食品の店頭には秋の味覚が並んでいる。とにかく皮を剥くのが大変な栗だけれど、やはり秋には食べたい、と頑張って皮を剥いた。月のように丸くて黄色い栗を、丸くて黄色い南京の鉢に盛った。

 今年の中秋の名月は、昨年、一昨年に続き3年連続で実際の満月と重なるそうで、次は2030年、7年後になるそうだ。宇宙の運びは私には難しくてよく解らないが、その神秘的な星の並びのストーリーには心惹かれる。地球では太古の昔から、どう頑張っても手の届かない月を見上げ続けて来た。その月に人類が一歩を刻んだのが50年ほど前だろうか。今や移住計画まであるほど、謎が解き明かされて来たけれど、見上げる月は昔も今も変わらず、宇宙の物語の壮大さに夢を感じる。

 黄南京とは、中国磁器でこの黄色い釉薬を掛けたものの事を言う。当時、中国を南京と呼んでいた頃の日本人が付けた呼び名だろう。多くは清朝の時代に作られたものが多いそうで、それより以前の時代となると、滅多にお目にかかる事は出来ない。

この鉢は本家(ほんか)の中国、時代は清朝の物と思われる。日本の陶芸家にもこの美しい配色に倣って、作品を上手く作られる方々がいらっしゃる。そのおひとり、古余呂技窯の川瀬 竹春は私の大好きな作家さんで、この黄南京に倣った色使いの素敵な作品を多く残している。以前No.58(2022/2/4)の回では、我が家にある八角皿を使った。

この鉢は大きく緩やかな輪花の曲線を描く。少し肉厚で粗さの透ける土肌に、発色の良い黄色と緑の釉薬が美しい。食卓に載るだけで、気持ちも明るく、暖かくなるような、そんな器で今夜の月を楽しむのも良いだろう。

器 黄南京 輪花鉢  径21cm 高8cm

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No.143 南瓜のケークサレ

 久しぶりにケークサレを焼いた。南瓜(かぼちゃ)を入れたら美味しいかしら。と試してみたら、生地に混ぜ込んだ粉チーズやベーコンの塩味と南瓜の甘さが良いバランスで、秋らしいケークサレになった。カリフラワーとウィンナーのグリルやサラダと盛り合わせてブランチ用のひと皿にした。

 この器はPOOLE。1873年創業のEnglandの陶器メーカーのもので、時代は重ならないかも知れないが、以前No.72  (2022/5/13 )とNo.127 (2023/6/2)の回で登場している小皿と同じメーカーだ。

ベースの色が薄いサーモンピンクをしているこの皿は、盛る料理によって色が馴染み過ぎ、美味しそうに見えなかったりする事があるのだけれど、この位ボリュームたっぷりに料理を盛り合わせると美しく引き立つようだ。器は、使う度ごとに違う表情が現れて楽しませてくれる。

この見込みの絵柄の鹿は、同じ頃 England を代表する人気の陶器のブランドだった Susie Cooper のアイコンとよく似ている。初めて見た時、裏を返すまでは Susie Cooper かと勘違いした記憶がある。この皿の作られた年代や経緯は不明だけれど、我が家では同じサイズの Susie Cooper の皿と棚の中で重なり合い、その時の気分とメニューで使い分け、楽しませてもらっている。

器 鹿柄プレート 径23,5cm 高2cm

作 POOLE (England)

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No.142 ぬれ甘なっと

 70年続くという、小豆を甘く炊いたぬれ甘なっと。その味を守り続ける調理の工程には、企業努力と多くの工夫が有るのだろう。小豆だけでなく、甘納豆は他の種類の豆でも色々有るけれど、私の好みは小粒な小豆の甘納豆。親の世代にもこのぬれ甘納豆のファンは多い。

 日本では世界各国のスイーツが次々と流行り、間も無く別のスイーツに移り変わって行く。スイーツにそれ程の情熱が無い私は、知らぬ間に流行りが移り変わっている。小さな面積の流行りのスイーツ屋さんが、オープンしたかと思うと試す間もなく別なスイーツ屋さんになっていたりする。スイーツ好きな人々のそれを探求するエネルギー、ただ『すごいなぁ』と感心するばかりだ。

この京都、粟田焼の小皿はとても繊細。きめの細かい土、甘めの焼きなので沁みやすい。色のある汁の物はもちろん、小皿だけれど醤油などは入れられない。いつの時代の誰の作、などは判らないが、鉄釉と呉須でさらっと描かれた秋草が美しい。この色使いと細い線で描かれた絵は、粟田焼の特徴。生地を成形して下焼せずに生掛けにしているから、だろうか。所々釉薬が爆ぜていて少し残念だけれど、地肌が露出している所は更に沁みやすいから、水分の無いお菓子などを盛る時に使っている。

器 粟田焼 小皿  径9,5cm 高2,5cm

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No.141 白瓜とわかめの酢の物

 瓜科の野菜は結構多い。胡瓜に冬瓜、南瓜、ゴーヤ、メロンやスイカ。胡瓜に近いように思うズッキーニは、瓜科の中でも南瓜属だそうだ。我が家でも頻繁に食卓に登場する野菜が多いのだけれど、今日の白瓜は今まで自分で料理に使った事はなかった。白瓜の漬物は好きで見つけると時々買うのだけれど、素材としては使った経験が無い。今時期はよく八百屋で見かけるようになったので買ってみた。

レシピを探すとやはり浅漬けなどの漬物が多い。でも、ちょうど生わかめが手元に有ったので一緒に酢の物にした。白瓜は種と綿を取って薄く切ってから、少し塩をして暫く置く。淡い緑の果肉が半透明に透き通って美しい。見た目で想像した通りのシャキシャキした食感。胡瓜よりもきめの細かい果肉で、青臭さも少ないようだ。今や胡瓜は一年を通して手に入るけれど、この白瓜は季節感が味わえる。今後は私のレパートリーに加わる事になりそうだ。

絵がわりの器は白井 半七の汲み出し茶碗。(白井 半七の器は、No.56, No.132でも登場)小鉢として使いやすい形と大きさ、深さだったので小向こうに使った。手前は酢の物、奥の器にはとろろを盛った。初めは5脚か10脚揃っていたのだろうけれど、今の我が家には4脚だけある。半七が得意とする乾山風の絵はもちろん素敵だけれど、見込みの、轆轤目が浮き出た僅かな凹凸に釉薬が溜まって淡いブルーのガラス質が透けた肌は、その絵を更に引き立てる。本体の質感や大きさの上に、軽いタッチで描かれた絵の技量、さすがは白井 半七と改めて魅入る。

器 乾山風 絵がわり 汲み出し茶碗  径9cm 高6cm

作 白井 半七

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No.140 アボカドと蟹のサラダ

 パッションフルーツをいただいた。旅で南国へ行った時に食べた事はあったけれど、日本で自分で買った事はなく、今や日本でも栽培されていて、島とはいえ東京都産まで有ると知って驚いた。硬い殻の中に在る甘酸っぱい果肉はきれいなオレンジ色で、黒い種が混在する。良く知る大抵の果物は、中心に種が有るのが普通だけれど、これは柔らかいゼリーのような果肉に粒の種が混じっている、なんとも不思議な果物。種は硬くなく、カリカリした食感で果肉と一緒に食べられる。そのままで勿論美味しいけれど、甘酸っぱい果肉を使ってドレッシングを作ってみた。

深いワインカラーが美しい、しっかりした殻を切ってみる。果肉はきれいに取り出せて、殻の内側は柑橘類と同じような乳白色。これは素敵な器になると思いついた。アボカドと蟹のほぐし身のサラダを盛り付け、ドレッシングはパッションフルーツを生かしてあまり味を加えず、オリーブオイルと僅かな塩を加えただけ。ちょっとお洒落なオードブル風のサラダになった。

このガラスの皿は日本の切子。少しブラウンがかった、精製の度合いは高くないガラスだけれど、それが柔らかさと温かみを感じる。時代も作者も判らないけれど、ひとつひとつ、職人の手で削られた素朴なカットがこのガラスの皿と調和して、愛おしさを感じる。

器 ガラス切子皿  径12,5cm 高2,5cm

作 不明