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うつわ道楽

No.187 ストレートティー

”ヴィクトリア・ブーケ” と名付けられた、このカップ&ソーサーは、ハンガリー(HUNGARY) の陶器メーカー HEREND(ヘレンド)の代表的なシリーズ。HEREND は、ハンガリーの首都ブタペストの南西、ヘレンド村で1826年創立された。

この ”ヴィクトリア・ブーケ” は、HEREND の中でも古くから有るモチーフで、1848年に創作されたそうだ。我が家のこのカップ & ソーサーは最近の物だけれど、変わらず今もこのデザインが受け継がれている。鮮やかな色使い、ハンドペイントで多彩な花、葉、蝶の優美な絵付けが施され、更に金が器の縁を飾り、その華やかさは見惚れるほど美しい。

その名の由来は、英国のヴィクトリア女王。ハノーヴァー朝第6女王であるヴィクトリア(1819〜1901 在位は1837年から)が、1851年にロンドンで開催された最初の万国博覧会の会場で、出品されていたこのシリーズのディナーセットを気に入り、買い求めた事が由来とされる。その後、ディナーセットはウィンザー城で愛用され、英国貴族の間に広まったそうだ。

当時、これほど美しい器を作る技術はすごい事だったに違いない。こんな器でディナーをしていた王族、貴族の方々の生活やファッションはどんなだったのだろう、と想像が膨らむ。日常の煩雑さから逃れて、少し優雅なティータイムを楽しんだ。

器 ヴィクトリア・ブーケ カップ & ソーサー 

カップ 径9cm 高5,5cm ソーサー 径14cm 高2,5cm

作 HEREND (HUNGARY) 

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No.186 トマトソース

 今年も 鱧が魚屋の店頭に並んだ。ほんの10年前、関東で鱧は季節の短い間、何度か魚屋で見かける程度だったと思う。でもここ数年、鱧は夏になると必ず有って、欲しい時に手に入る食材となった。

 ”カラマリ”というイタリア料理がある。私が大好きな料理だ。烏賊をリング状に輪切りにして、衣をつけて揚げたもの。いわゆるフリットだ。少し厚みのある衣にレモンを絞ってトマトソースをつける。冷えた白ワインとの相性が素晴らしい。何となく今日は鱧の気分で買い求めてから、白身で淡白な鱧はきっとフリットにしたら美味しいのでは、と思い付き烏賊と海老も加えてフリットを作った。

フリットを盛り合わせたのは Susie Cooper のボウル。これは以前No.33 (2021/8/13) の回で人参のラペを盛って使っているので、今日の主役はトマトソースになった。こちらも同じく Susie Cooper。フリットを盛ったボウルは、帆船の、古いタイプのバックスタンプだが、今回の器は鹿のバックスタンプなので、時代的には今回の器の方が近世のものだ。ソース入れに使ったが、この器は本来はシュガーボウル。組み合わせてソーサーにしている皿もソーサーではなく同じ柄の小皿だ。この柄でカップ&ソーサーも持っていて、ひとり用のティーセットとして購入した。朱色と黒でまるでアルファベットの ”Q” を逆さにしたような、キュートな飛び柄が愛らしい。

花柄の大きいボウルとシュガーボウル、どちらも Susie Cooper で、少し時代は違うけれど、同じ華やかな朱色が使われていて組み合わせて使うと思った通りの統一感。楽しい時間を過ごした。

器 Susie Cooper シュガーボウル(径9cm 高4cm) 小皿(径13,5cm 高1cm)

作 Susie Cooper

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No.185 焼茄子

 代表的な夏野菜のひとつ、茄子。カリウムや食物繊維が豊富で、夏バテ解消にも良いそうだ。やはり旬の野菜は、その季節に身体が対応するために必要な要素が含まれていて、自然の恵みの奥深さに感動する。美しい茄子紺色の皮には、抗酸化作用の有るポリフェノールが豊富で、皮ごと食するのが効果的。とは言え今日は焼き茄子なので、香ばしく焼けた皮は外してある。我が家の焼き茄子は、白胡麻と削り鰹、おろし生姜と醤油でいただくのが定番だ。

 涼しげな空色の向付に盛った。これは、古余呂技窯 2代 川瀬 竹春のもの。六角形のフォルムが特徴的。竹春の器は、我が家のお気に入りなので、過去に何度も登場している。(No.6, 27, 51, 58, 122, 151, 152, 158) 柔らかく丸みのあるボディで、竹春の器にはよく有る、厚みの有る口の作り。そこにも黄の花と緑の葉が描かれて、食べる時に器を覗き込む目を楽しませてくれる。絵の輪郭は釘彫で掘られ、そこに青、黄、緑、白、紫の透明感のある五彩が彩っている。見込みは白磁の白で絵は無いが、轆轤でついた渦巻きが表情を加えて美しい。

器 五彩 南蛮花鳥文 向付 径13cm 高6,5cm

作 古余呂技窯 第2代 川瀬 竹春

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No.184 カルピス

 今はまだ梅雨にもかかわらず、もう真夏かと思うような強い陽射しが照り付ける。こんな蒸し暑い日は甘酸っぱいカルピスが美味しい。このブログで2回目の登場となるカルピス。前回は、No.34(2021年8月20日)で、ガラス作家、江波 冨士子さんの鯛の模様のコップを紹介した。

 今年で105周年を迎えるカルピスは、1919年(大正8年)7月7日に販売が開始された。だから七夕の日はカルピスの誕生日。発売当時のカルピスはビン詰めで紙箱に入って、中身の味とはかけ離れた、まるで養命酒の様な包装だったらしい。さすがに外見と中身のギャップが有ったのだろう、1922年に瓶を爽やかな水玉模様の包装紙で包んだ形態に変わった。この水玉模様は、発売日の七夕に因んで天の川をイメージしたもの。1922年の最初の包装紙は、青地に白の水玉模様だったが、その後1949年(昭和24年)に配色を逆にし、私達の見慣れた白地に青の水玉に変わったのだそうだ。

 カルピスを作るための乳酸菌、カルピス菌は大正時代からずっと同じ菌が使われていると言う。新鮮な牛乳から脂肪分を取り除いたものにカルピス菌を加え、発酵させ、発酵することで増えたカルピス菌の一部を保存タンクに戻す、ということを続けて、秘伝のタレのようにカルピス菌を代々受け継ぎながら守っているのだそうだ。

この ”朝顔グラス” と呼ばれるガラスコップは、売り物ではなくノベルティとして作られたもの。何度も代替わりして、少し前まで作られていたらしい。調べたけれど、最後に作られたのがいつか、は解らなかった。でもかなり長い期間作られていたらしく、調べると様々な朝顔グラスが作られて来たのがわかる。

この、縦書きのカタカナロゴのこのグラスの時代は昭和の半ば頃だろうか。後半に作られたものは、ロゴはアルファベットだし、その前はカタカナでも横書き。この縦書きのカタカナはそれ以前と思われる。とても小振りで、喉が渇いている時にはこれでは足りないな、と思うけれど、シンプルでキッチュな愛らしさがある。

器 朝顔グラス  径7cm 高9,5cm