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うつわ道楽

No.196 鰯の蒲焼丼

 時々食べたくなるこの丼。青魚は好きでお刺身や塩焼き、煮魚など作って良く食べる。”蒲焼”と言えば鰻。もちろん鰻も大好きだけれど、栄養豊富であるが故に高コレステロール。その点、鰯だと身体にもお財布にも優しくて、良い事ばかりだ。

 魚屋の店頭で、鰯をざるに盛って売っているとつい買ってしまう。当日は塩焼きにしたとして、すぐに食べ切れない分は、その日のうちに梅煮や味噌煮などにしておく。

この蒲焼は、初日に食べ切れなかった塩焼きや、梅煮にしておいた鰯に手を加えたもの。中骨などの気になる骨を取って、梅煮ならその煮たつゆで、塩焼きの場合は、醤油や砂糖、味醂などを合わせたつゆで煮て、つゆを煮詰めればそれで完成。調理法として厳密には ”焼” ではないけれど、名付けるならやはり蒲焼丼がわかりやすい。

 熱いご飯に白胡麻、焼き海苔を散らし、鰯を乗せて青葱を盛る、大好きな味。今日は、永楽 妙全(1852-1927)の赤絵の鉢に盛った。第14代 永楽 善五郎 (得全) の妻で、得全亡き後、次の15代 善五郎(正全)が襲名するまでの期間、永楽窯を支えた女性。代々の永楽の中でも大好きな作家で、これまでに何度も登場している。女性だから、と決めつけるつもりはないけれど、妙全の作品にはしなやかな柔らかさと華やかさを感じる。この鉢は白磁のすっきりした白の肌に、赤と緑が迷いの無い筆で描かれ、その上に載った金泥に華やかな魅力を感じる。

器 呉須写 赤絵鉢  径15,5cm 高8cm

作 永楽窯 永楽 妙全

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No.195 お月見プレート

まだまだ残暑厳しく、猛暑日の最遅記録更新中だけれど、もうすぐそこまで秋はやって来ているらしい。気がつくと夕暮れが早く、陽が傾くと涼しい風が吹いて来る。青空の残る空に欠け始めた月。冷えたワインで月を眺めながらいただこうと、料理を盛り合わせた。

 箱も銘も無く、窯も作者も判らない。すすきのような草が彫られた鼠志野の角皿。彫られた窪みに釉薬が溜まり、白く浮き出している。叩きで作られた平たい皿は、四方が少し持ち上がり、そのごつごつした縁の質感がとても力強い。大きな窯傷が2本、金継ぎで埋められていて、近頃の気候のせいか、稲光のようにも見えたりする。中々使う機会がないのだけれど、心惹かれる皿だ。

 盛り合わせたのは、いちじくと生ハム、蛸のカルパッチョ、マッシュルームのブルスケッタ。ブルスケッタは、いつもトマトで作ることが多いけれど、思い付きでマッシュルームを使ってみたら思った以上の美味しさ。これから我が家の定番メニューに加わりそうだ。このブルスケッタは、ブラウンマッシュルームを薄切りにして、塩とオリーブオイルをまぶしておく。バケットににんにく風味のオリーブオイルを少し塗って、マッシュルームを載せ、おろしたパルミジャーノチーズをかけてオープントースターで焼くだけ。マッシュルームは、もっと山盛りにしても良さそうだ。好きな料理に加えて、新しいメニューも加わり、美味しい時間を楽しんだ。

器 鼠志野 角皿  径25x28cm 高3cm

作 不明

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No.194 お酒

今年の中秋の名月は9月17日だそうだ。もうすぐなのに真夏の暑さが続いていて、秋はまだ遠い。とは言っても、確かに朝夕は少し秋の気配が漂って、虫の声が聞こえたりする。少し身体を労って、温燗のお酒にした。

澄んだ濃紺の空と、明るく輝く月の黄色を思い浮かべるような色使い。この猪口は 初代 川瀬 竹春(1984-1983)のもの。オランダの陶器の写しで、乳白色の土に呉須と黄、そして鉄釉の茶で色が付けられている。

 竹春は中国陶器の写しや赤絵、染付、祥瑞などが多く、好きな作家さんで、これまでに何度も登場しているけれど、オランダ写しは我が家にこれひとつ。形や模様が特徴的で西洋を感じさせる訳ではなく、中国や日本の陶器に有っても不思議ではない意匠なのに、西洋を感じさせるのは何故だろう。華奢な質感と色使いのせいかしら、と思ったりする。

器 オランダ写 猪口  径5,8cm 高5cm

作 古余呂技窯 初代 川瀬 竹春

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No.193 パプリカのマリネ

 色が鮮やかなパプリカ。昔は粉状の瓶詰めスパイスと、筒井 康隆の小説でしかその名を知らなかった。野菜の種類はここ数十年でどれだけ増えたのだろう。

 パプリカの原産地はハンガリーらしい。原種はコロンブスがアメリカ大陸から持ち帰った様々な唐辛子の種を品種改良してハンガリーで作り出された野菜で、スペインではピメントと呼ばれる、と。ピメントってグリーンオリーブの実の、種を除いた穴に詰められている、あれだ。色も味もパプリカそのものなのに、今までなぜ気が付かなかったのだろう。

調べてみたらパプリカはピーマンと同じナス科唐辛子属の野菜で、ピーマンとは品種違い。肉厚でジューシー、甘味のあるパプリカは、ピーマンと比べるとビタミンCは約2倍、カロテンは約7倍あるそうだ。スープや炒め物、加熱しても色が変わらず鮮やかで、とても使いやすい。因みにスペイン料理でよく使うスパイスのパプリカは、実の皮のみを乾燥させて粉末状にしたものだそうだ。

 昔、アルバイトで勤めていたスペイン料理の店で、夏野菜のマリネと言うメニューがあった。茄子と2色のパプリカをオリーブオイルを塗ってオーブンで加熱。皮を剥いて食べやすい大きさに切り分け、マリネ液に漬け込む。残暑のこの時期、酸味のあるさっぱりした料理でちょうど良い、と思いだした。茄子は無かったのでブロッコリーで彩りを加えた。

 パプリカの赤と黄を見て、大好きな小皿に盛り付けた。太極紋が中央に、その周りに八卦。古代中国から伝わる ”当たるも八卦、当たらぬもの八卦” が描かれている。土も釉薬も粗く、上手(じょうて)ではないけれど、少し前の時代の中国の色絵で、小さいながら存在感のある皿だ。高い高台と、八角形のバランス、厚く掛かった釉薬と、その絵の素朴さがとてもバランスが良い。つい使いたくなる一枚だ。

器 色絵 対極紋 八角小皿 径11cm 高3,5cm

作 中国