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うつわ道楽

No.211 炊き合わせ

 白磁に、刷毛目を残して朱の釉薬を塗った、それだけなのに凛とした美しさが有る。朱の釉薬の溜まりによって、色の濃さや表面の凹凸の些細な変化が何とも言えず美しい。見込みには呉須で 『壽』 の一文字。紅白に寿、縁起の良いこの鉢は 北大路 魯山人のもの。

 プロにはとても遠く及ばないけれど、なぜか魯山人の器は素人の私でも盛り付けやすい。こんな風に盛ってみて、と器に言われているようだ。魯山人ご本人が料理を盛ることを考えて作っているからだろうが、料理をする人に広く懐を開いてくれているように感じる。

炊き合わせは、里芋に牛蒡、人参、蓮根、椎茸、高野豆腐と菜の花。お正月は甘味が強めな料理が多く飽きるので、出汁を効かせたさっぱり味に仕上げた。器と共に素材の味を楽しめるひと皿になった。

器 金襴の赤 鉢   径21cm 高10cm

作 北大路 魯山人

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うつわ道楽

No.210 おせち料理

 年末に留守をしたので、出掛ける前に作り置きが出来る料理を準備しておいた。黒豆、きんとん、ごまめ、鴨。新年には、それらと紅白蒲鉾や伊達巻を 橘屋 友七 の闇蒔絵の提三段重に盛り合わせた。

 京都の塗り師、長野 横笛 (ながの おうてき)が起こした漆器店 “橘屋” (1800年初め)は、二代目の時には隆盛を極めたが、三代目が早世したために”橘屋”の屋号を、その門人だった 浅野 友七が受け継いだ。

浅野 友七 の情報は少なく、生没年は定かではないながらも1860年(万延元・安政7年)没という記述が残っているらしい。明治5年と11年の京都博覧会の記録には『浅野 友七 手道具商社 博覧会社』の名があるが、その頃には友七の子や孫が”橘屋”の屋号を継いでいて、初代の友七は幕末に亡くなっていたのだろうと推察されている。

この三段の提重は黒一色。外箱には 橘屋 友七 の名が入っている。黒漆を横に凹凸のある刷毛目に塗り、その上に黒漆で秋草が繊細なタッチで描かれている。黒に黒で闇蒔絵。しかし古い文献を探ると ”黒蒔絵” と表記されており “闇” ではなく “黒蒔絵” を正しい表記としているらしい。しかしながら ”闇蒔絵” という表現はイメージを掻き立てられて、魅力的。つい使いたくなる。

 持ち手の内側など、当たるところには擦れた跡が有り、漆の浮いている所も数箇所ある。使われた回数は判らないけれど、きっと多くの場面で料理を盛って使われて来たのだろうと感じる。今、私がこれに料理を盛って使える事に感謝したい。

器 黒蒔絵 提三段重 

径19x16cm 高21cm (上5cm 中5,3cm 下6cm)

作 橘屋 友七