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うつわ道楽

No.270 サーモンとアボカドの和え物

 先日、初めて梅の花のお花見に出掛けた。我が家の紅白2本の梅の木でも充分楽しんだのだけれど、以前から一度行ってみたいと思っていた。ちょうど満開の見頃を迎えた時で、お天気も良く、青空に映える梅は壮観だった。

沢山ある梅の中には、もう終わりに近いものや、まだ蕾が堅い木もあった。それぞれの木に品種が書かれていて、名前の由来の説明もついている。梅の木は桜ほど背が高くないので、花を目の高さでじっくり観たり、鼻を近づけて香りを楽しむ事も出来て大満足なお花見だった。

数日後、久しぶりの雨で我が家の梅もすっかり散り、梅花の季節は終わりが近い。紅梅、白梅に続いて次は私の番よ、と椿が沢山の蕾を付けて待っている。

 梅の小皿は 大野 鈍阿(おおの どんな 1885〜1951)のもの。美濃焼の産地、土岐(岐阜)で生まれて子供の頃から陶芸の見習いをしていた。20代半ばに上京し品川辺りで雑器を作っていたところを、御殿山に邸の在った 益田 鈍翁 に見出され増田家お抱えの職人となる。邸宅内に住居を与えられ、窯を築き、鈍翁の所有する名品の茶器を手本に、写しを作るよう命じられたそうだ。鈍翁に見出されるからには元々の才が有ったのだろうけれど、実物を観て、触れて学んだ事で鈍阿の腕も磨かれ、感性が花開いたに違いない。鈍翁が自らの字を取って「鈍阿」と名付けた。鈍翁が小田原に転居した後は、上目黒、等々力と移りながらそれぞれに窯を築き作陶を続けた。

少し厚く、柔らか。楽焼のような質感の皿だ。梅の花を模った五弁の輪花の中央に雌しべと雄しべが陰刻で描かれる。梅の季節の名残に使ってみた。盛ったのは、サーモンとアボカド、クリームチーズを山葵醤油で和えたもの。近頃、サーモンとアボカドの組み合わせに凝っていて、思い出して久しぶりに作ってみた。冷酒にも白ワインにも合う、手軽な酒の友となった。

器 梅花 小皿(五枚) 径12cm 高3,5cm

作 大野 鈍阿

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No.269 山椒の実

 今年の山椒はまだまだ先だけれど、佃煮になっている袋詰めをいただいた。丹波産の青山椒で、パッケージの隙間から少し見える山椒の実は摘みたてのようにきれいな色。それを見ただけで、実をぷちんと噛んだ時の口に広がる香りが蘇り、唾が出て来た。

 思った通り、炊き立ての白米に載せて食べたら最高に美味しい。煮た鶏や白身魚に添えても風味が引き立つ。珍味のように小さい器に入れてあげたいと考えて、この竹節の香合に入れた。竹の意匠を見て、きっと筍に添えても良く合うだろう。新鮮な山椒の葉ももちろん良いけれど、試してみたくなる。冷凍庫で大事に保存して、筍の季節まで楽しもうと考える。

 白磁で、筍の節の根の尖った突起が鋭い。その繊細な作りに呉須で色を加えて、筍の根の部分がとてもよく表現されている。胴には笹の葉が描かれ、蓋の持ち手も笹、傍に蝶が二匹飛んでいる。もしこの根を表す尖りが無かったら、ここまで鋭く、繊細でなかったら、と想像すると魅力が半減してしまうのではないかしらとすら感じる。

作ったのは 川瀬 竹春。大好きな作家さんで何度も登場している。我が家に有るのは殆どが 第二代 竹春 だけれど、この香合は供箱が無く、初代か二代かは不明。本来は香を入れるための器だけれど、山椒も香りを楽しむと言う意味で、使い方は間違えてはいないのではないかしら、と言い訳のように考えてみる。

器 染付 竹節香合  径5,5cm 高3,5cm

作 古余呂技窯 川瀬 竹春 (代不明)

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No.268 熱燗

 裏庭の白梅が見頃を迎えた。紅梅の盛りが過ぎ、次は私の番と言いたげに良い香りを漂わせる。先日の雪で、枝や花に積もる雪にめげる事なく咲く白梅は美しい。昨年はこの木になった梅の実が豊作で、楽しませてもらった。

雪の日に、その “雪中梅” を眺めていてこの酒器を思い出した。ちょうど今が季節の器だ。なんとなく思い浮かべた “雪中梅” と言う言葉。どこから来たのだろうと思って調べてみた。

何か物語に出てくる言葉かと思っていたのだが、なんと新潟県上越市の日本酒の銘柄だった。”越乃寒梅” “峰乃白梅” と並び、越後三梅と呼ばれるそうだ。そう言えば昔、聞いた事があったような気もする。日本酒の銘柄で聞き覚えがあり、頭に残っていたのだろうか。でも、雪に咲く梅、としか表現していないのに、雪景色に美しく咲く梅の風景が眼に浮かぶ。実際には見たことがなかったとしても、写真や映像で見た記憶がそうさせるのだろうか。

 この酒器は、第16代 永楽 善五郎 (即全 1917〜1998) のもの。18歳で 善五郎 を襲名し、金蘭手、仁清写、交趾など多彩な技法で作品を残している。この酒器は乾山写で、土の上に藁灰を掛け、鉄釉と白薬、呉須を使って乾山らしい白梅が描かれている。箱には一対の酒器と、五客の猪口が組になっていたようだけれど、我が家に来た時に猪口はひとつ欠けていた。

寒い日の熱燗はご馳走。残念ながら日本酒の “雪中梅” は無かったけれど、手持ちの純米酒で温まった。

器 乾山写 梅 酒瓶 

酒瓶 径6,5cm 高11,5cm 猪口 径6,5cm 高3,5cm

作 第16代 永楽 善五郎 (即全)

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No.267 菜花の辛子和え

 立春が過ぎ、暦の上では春が訪れた。八百屋の店先にも春の野菜が並び始め、菜花の辛子和えを作った。春野菜は少し苦味のある物が多い。寒さの中で育ったせいかしら、なんて勝手に想像してみる。でもそのほろ苦さが春の味覚だ。

使った器は高取焼。黒田 長政 が朝鮮出兵の際に陶工を連れ帰り、福岡県直方市にある鷹取山の麓に窯が開かれたのは400年前、1600年頃と伝わる。江戸時代には黒田藩の御用窯で、二代藩主の頃に 小堀 遠州 と交流を深めた。遠州七窯に数えられ茶道具のお茶入れや水差しなどが多く伝わる。

 この古高取の向附は5客組で時代や作者は不明。陶器でありながらきめ細かい土を使い、磁器のような薄さが高取焼の特徴。4片の花弁が緩く曲線を描き、見た目で感じるよりも見込みが広い。まだらに流れる釉薬の表情は豊かで、部分的に厚く掛かる黒が器の表情を引き締める。

器 高取焼 輪花向附  径9cm 高5cm

作 不明