No.146 落ち鮎
ちょっとしたご縁で知り合った方から、鮎を送っていただいた。岐阜で採れた天然の鮎。今時、天然の鮎はとても貴重。10年くらい前までは時々鮮魚店の店頭で見つける事もあったけれど、今時は並ぶのは養殖物ばかり。養殖の鮎も遜色なく美味しいけれど、天然の鮎は香りが違う。
この時期特有の、腹が蜜柑色に染まった落ち鮎は、鮎の旬とされる6月、7月の若い鮎とは違う美しさと味わいが有る。川を遡りこれから成長する鮎と、藻を沢山食べて大きくなり、今度は産卵のために川を下る鮎。美味しさでは賛否両論あるようで、その大きなお腹には卵や白子を抱えている。内臓はどこに行ったのかしら、と思うほどお腹は卵でいっぱい。香りが強く脂の載った若鮎を楽しむか、身と同じ程の卵を持った落ち鮎を味わうか、好みが別れる事もあるらしい。
私は、この卵を抱えた鮎で作る鮎ご飯が好きだ。塩焼きの鮎を多めに焼いて、何匹かを研いだお米に載せて炊く。頭や骨を外してご飯に混ぜ込んでいただく。いただいた鮎を贅沢に使って、塩焼きと共に鮎三昧にした。
塩焼きの鮎を乗せた呉須染付の大皿は、ホツ(欠け)や入(にゅう)の傷が有るけれど、堂々とした風格のある所が気に入っている。中国漳州窯、呉須赤絵などと同じ窯で、明末清初の頃の皿だ。土の上に白の釉薬を掛け、呉須で花が描かれている。呉須の色は少し濁っているけれど、それはそれで灰色がかった地の色と馴染んで美しい。
器 染付大皿 径27,5cm 高5cm