No.14
香りでも桜を楽しもうと、桜餅を買いに近くの和菓子店へ行った。お目当ての道明寺を頼んでふと見ると、最近見かけないと思っていた3色のお団子が有るではないか。それなら、と、思わず花屋に寄って、切り花で売られている啓翁桜を飾って家でこじんまりとお花見団子をいただいた。
お花見団子、花より団子という言葉もあるが、お花見とお団子の結びつきはどこから来たのだろう?と思って調べてみたら、豊臣秀吉が晩年、贅を尽くして開いたとされる『醍醐の花見』に由来する。らしい。10年ほど前だろうか。京都をお花見で訪れた時に、この醍醐寺の桜を見た。この辺りは平安時代から『花の醍醐』と呼ばれる桜の名所だとか。広い境内には紅白の幕が張られ、とても華やかで優雅で、秀吉の時代もこんなだったのだろうかと思いを馳せた記憶がある。そこで、買って来たお花見団子を秀吉の時代はどんなだったろう、と私なりに再現してみた。
美しい塗りの輪花皿は、長野 横笛 (おうてき) 初代のもの。 江戸後期、享和年間に漆器、蒔絵の製作を始めたとされる。年月が経った漆の、真塗りの落ち着いた美しい色。しっとりとした皿の面には、そこに盛ったお団子と満開の桜を、まるで鏡のように鮮明に映している。
器 真塗 輪花皿 5枚
作 長野 横笛