No.159 干し柿
ドライフルーツと聞いて思い浮かぶのは、パウンドケーキに入っている、あれ。歳が知れてしまいそうだけれど、子供の頃はドライフルーツというと、そのケーキに入っているイメージだった。私はあのケーキが苦手だった。そのためか、ドライフルーツにはあまり興味が無かった。とは言えレーズンは料理やお菓子によく使うし、杏やマンゴーなどは好きで時々食べる。昔に比べると種類も食し方も変わり、保存するための手段だけでなく、フルーツの味わい方のひとつ、として定着している。
『干し柿』を調べてみたら〝日本に古来からあるドライフルーツ”という説明を読んで、納得すると共に軽い衝撃を受けた。フレッシュな柿のままでは人が食せない渋柿を、干し柿にする事で、渋柿も美味しくいただく、昔の人の知恵の詰まったドライフルーツだった。
渋柿は、木に実った生の状態ではタンニンが強く、人の舌ではその名の通り渋味とそれによる刺激が強くて食べられない。それを乾燥させることにより、渋柿の水溶性のタンニンが不溶性に変わって(渋抜きがされて)渋味がなくなり、甘味が強く感じられるようになる。その甘さは砂糖の約1.5倍とも言われているそうだ。
柿は、もちろんそのままで美味しくいただけるけれど、料理に使っても美味しい。生の柿には生ハムを、甘みが凝縮された加工した柿にはチーズがよく合う。以前、知人に美味しい柿のジャムをいただいた。クラッカーにカマンベールチーズとそのジャムを乗せて食べてみたらとても美味しく、そのジャムが無くなるまで、そのメニューにはまった事がある。干し柿を薄く切って、同じようにしたらきっと美味しいに違いない。この干し柿がある内に、カマンベールチーズを買って来て試してみよう。
この塗りのお皿、原木からくり抜かれた木地は5弁の花の輪郭。裏側と華奢な縁は磨かれた艶のある漆だが、内側は漆でしぼ状に凹凸がついた仕上げになってる。その見込みには、同じく5弁の花形に切られた金属が貼ってある。素材は銅か砂張だろうか。七宝で菊の模様が描かれている。漆の盆に金属の板を貼り付ける、なんて面倒で手の込んだ手法は初めて見た。この七宝を見ていたら、干し柿を盛ってみたくなった。水分の残った柔らかい干し柿は美しい柿の色をそのまま残していて、菊の色とよく映る。
器 七寶入 菓子盆 径18x18cm 高3cm
作 不明