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うつわ道楽

No.160 新じゃがいもと蒟蒻の牛そぼろ煮

 この季節に出回る小さな新じゃがいも。一般的な新じゃがいもは春先からが旬だけれど、直径が3〜4センチほどの小さな粒は今頃の短い期間にしかお目にかかれない。

鹿児島産の出始めを見つけたので、丁度大きさが同じくらいの蒟蒻と一緒に、牛肉のそぼろで煮っころがしを作った。彩には絹さやを飾る。新じゃがいもは皮付きで使うと、よく煮込んでも煮崩れがなくて使いやすい。牛肉の風味と脂で味に深みが増し、食べ応えのある煮っ転がしになった。

 作者も判らぬ祥瑞の鉢に盛った。時代は幕末か明治だろうか。繊細で緻密な花や幾何学模様が、鮮やかな呉須で正確に描き込まれている。絵を描いた職人さんの腕が良いのだろう。しかしこの、捻りの凹凸のある素地に、どうしてこんな細かい模様を描こうと思ったのだろう?外側の模様は捻りの凹凸に乗せて描いているが、内側の見込みはその凹凸に逆らって、交差するように絵が入っている。捻り模様になった山と谷のある上に描いた植物も美しく、すごいけれど、この幾何学模様。一体どうやって描いたのだろう。平面に描くのでさえ、祥瑞の幾何学模様を描くのは難しいのに、この模様を、このデコボコにどうやって描いたのか、と目を疑う。絵の力量もさることながら、この根気と集中力には賞賛を通り越して呆れてしまう。一体どんな職人ががこれを描いたのだろう、と想像が膨らむ。

器 祥瑞捻り鉢  径17cm 高8,5cm

作 不明