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うつわ道楽

No.162 苺大福

 間も無く立春。2月が始まったばかりで、まだまだ寒い日が続くけれど暦では春を迎える。自然の巡りは暦通り。庭の紅梅が開き始めて、良い香りを漂わせている。2本並んだ紅梅と白梅は、毎年必ず紅梅が先に開き、満開を過ぎた頃に白梅が開き始める。濃い紅の色が美しくて、開くと嬉しくなる。

開いた紅梅を眺めていて、この皿を思い出した。水月窯の紅梅白梅の小皿だ。水月窯の作品ではよく知られた模様だが、窯名のみで作者の名は入っていない。水月窯は、荒川 豊蔵が二つめに作った窯である。最初の窯は、豊蔵が志野焼の窯跡を発見し、美濃古窯跡群を調査した後の昭和8年(1933)に、務めていた北大路 魯山人の星岡窯を辞め、発見した志野焼の窯跡近く、牟田洞に作った。

水月窯は、志野や瀬戸黒を焼く牟田洞の窯とは別に、日常生活で使うための食器を作るため、昭和21年(1946)に虎渓山に開き、豊蔵の2人の息子が中心となって作陶、運営に当たった。先にも書いた通り、水月窯の器には窯名だけで作者名は無い。この梅の小皿は長い歴史を経て来た物ではいし、作者も判らないけれど、季節を感じて普段使いに楽しめる所が気に入っている。今日は食べたくなって、買って来た苺大福を盛った。

器 紅白梅小皿  径13cm 高1,5cm

作 水月窯