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うつわ道楽

No.16 若竹煮

 旬の幸を自宅で楽しめるとはコロナ禍の今、なんて贅沢な事だろうと思う。今回の筍は、家人の福岡出身の母が毎年送ってくれる福岡県、合馬のもの。この合馬の筍、いつも新鮮で柔らかく、香りの良いものが届くが、今年の筍は例年にも増して柔らかい。料理によって、根に近く繊維の硬い部分と穂先に近いところと使い分けたりするが、今年は硬い部分が全く無く、炒め物や好きな筍のキンピラにまでは回らず、ほとんどを煮物でいただいた。 季節を同じく旬を迎えるわかめとの組み合わせは『春先の出会いもの』と言われるそうだが、季節が一緒と言うだけではない絶妙な組み合わせだと思う。わかめは保存食として年中流通しているが、今の時期の生わかめは歯ざわりも色も良くて好きだ。これに木の芽を添える。出始めた山椒の若芽は、香りでも盛り付けにも彩りを添えるので欠かせない。このメニューを完成させた人はすごいと感心する。

 筍は毎回盛り付けに悩む。香りを生かして大きめに切るので、盛るのが難しい。もっと平たい鉢を使うと格好良いのだが、更にハードルが上がるので、今回は厚手でどっしりした濱田庄司の深めの鉢を使った。明治27年(1894)に生まれ、学校でも2年先輩という河井寛次郎と共に民藝運動に師事し、主に昭和に活躍した陶芸家だ。丸く抜い素地に大らかで素朴な草を描いた、力強い鉢だ。

器 鐡砂丸紋鉢 径21,5cm

作 濱田 庄司 

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