No.166 ちらし寿司
もうすぐ雛祭り。少し早いけれど恒例のちらし寿司を作った。家に伝わる大正時代の雛人形は、長い年月のうちに壊れたり紛失した飾物も有る。無いものは補いながら、壊れた所は直しながら、飾り方を工夫して今も変わらず私の宝物。昭和、平成、令和と時代は変わり、飾る場所も変わって来たけれど、年に一度飾って、再会するのを楽しみにしている。
雛祭りのちらし寿司はやっぱり華やかにしたい。今年は錦糸卵に菜の花といくら、海老を飾り、酢飯には穴子、酢蓮根、筍、白胡麻と大葉を混ぜた。この華やかなちらし寿司を青呉須の皿に盛った。料理も明るく華やかで、皿の染付の青の色が美しく映った。
青呉須は、染付の藍色の呉須とは異なり、呉須赤絵などに使われる緑ががった透明感のある色で、この青呉須だけで描かれた陶器を『タンパン』とも言う。見込みの中央に漁師を乗せた舟が描かれ、私には読めないけれど詩も書かれている。素朴な筆使いと絵が暖かい。
縁が付いた平皿にはよく有る作りで、裏には低い高台が有るのだけれど、この高台よりも皿の中央が下がっていて、机に置くと高台が浮いてしまって収まりが悪い。きっと窯の中で何かと重ねて焼いていて、皿の底が下がってしまったのだろう。こんな器は、机や折敷を傷つけるので、少し厚みのある布や繊維で出来た敷物を使う。今の時代では皿として商品にはならないけれど、古い器を使うにはこんな不都合も楽しめる心のゆとりが必要だ。使った時の美しさと満足感には代え難い物があるのだから。
器 青呉須 舟図平皿 径21,5cm 高4cm