No.17 新玉葱のムース
地元の、昔馴染みのイタリアンレストランの料理教室で何年か前に習ったレシピ。瑞々しくて甘味のある新玉葱の旨味が凝縮されたピュレをゼラチンで固めてムースにした、お洒落なオードブル。実はいつもはここまで手を掛けず、ポタージュとして、温めたり冷やしたりして頂くことが多い。でも、たまには教わったレシピでと思い、器にこの氷コップを思い付いた。
氷コップ。初めてこの名を聞いた時『なるほど。かき氷のためのコップ』とすぐにその用途に結びついたが、なんともレトロな響きの可愛い名称が気に入った。今回のような浅くて口の開いた氷コップにはアイスクリームやかき氷、と用途を限っていたのだが、ムースを盛ってみたら気に入った。淡い緑のガラスはウランガラス。この淡い緑の色を出すために放射性のあるウランを微量混ぜ込んだもので、ボヘミア地方(現在のチェコ西部)で発明されたそうだ。日本でも大正時代から昭和にかけて食器や工芸品が製造されていたそうで、この氷コップもその頃のものと思われる。当時は単純に色を付けるための手法だったとしても、作る過程での健康被害に対する配慮も無い時代だったのだろう。ウランガラス製品は製造されてから今も、人体には影響を及ぼさない程度(体内の必須ミネラルに含まれる程度との事)の放射線量を発し続けていると言われる。そう聞くと、紫外線を当てた時の美しく光る発光現象も妖しさを帯びて見える。
ソーサーに組み合わせたのは、英国の Royal Albert (ロイヤル アルバート) のカップ&ソーサーの皿。色とサイズで選んだのだが、このアールデコの図柄から見ておそらく1920〜30年代のものと思われる。ウランガラスについて調べて、日本ではウランガラスが大正 (1912~1926) から昭和にかけて製造されたと知った。と、いう事は日本と英国で同時代に造られた可能性がある。古い器や道具を使っていると、思いがけない組み合わせや発見が有って面白い。
器 ウランガラス 氷コップ(日本 径10cm)
皿 Royal Albert (英国 径14,5cm)