No.171 飛龍頭
飛龍頭と書いて “ひりょうず“ または “ひろうす“ と読む。これは主に関西圏の呼び方で、関東では “がんもどき“ 或いは省略して “がんも“ の名で、おでんや煮物の具として一般的に料理に使われる。豆腐料理だから、油揚げと共に豆腐屋さんで買い求めることが出来る。なぜ、関西と関東で全く呼び名が違うのか、少し調べてみた。
『ひりょうず(飛龍頭)はポルトガル語の ”Filhós(フィリョース)” に日本語の音を当て、漢字で表記したもの。“Filhós” はポルトガルの伝統菓子で、戦国時代に日本に伝わったとされる』とある。材料は小麦粉で、大豆由来の飛龍頭とは全く違う食べ物だったはずが、おそらく見た目と油で揚げた共通点からこう呼ばれるようになった、と考えられているらしい。
一方 ”がんもどき“ は、『江戸時代に考案された精進料理で、もともと材料は豆腐ではなくコンニャクで、味が雁(ガン)の肉に似ているからそう呼ばれるようになったと言われています。しかし、いつからコンニャクが豆腐に変わったのか、なぜ ”がんもどき“ と ”ひろうす” が同じものになったのかなど、はっきりした由来は現在も謎のままのようです』
“がんもどき” とはそのままの意味だったのか、と驚いた。そもそも昔は、鶴も食べていたと聞くから雁も今で言うジビエで、猟師が仕留めたもので、一般に流通していた訳では無さそうだし、きっと貴重な動物性たんぱく質として高級な食材だったのだろうと推測する。しかしその頃の材料は蒟蒻、となると当時の “がんもどき” の味は知る由もない。
と、由来の話が長くなったが、揚げたての飛龍頭を食べたくなって、前日に煮たひじきと銀杏を入れて作ってみた。木綿豆腐の水をよく切って裏漉しし、すりおろした山芋、卵とひじきを加えて混ぜて丸めて揚げる。おろし生姜と醤油で揚げたてをいただいた。果たして鴈の肉はどんな味だったのだろう。
盛った器は、我が家ではかなり初期から在る古染付の皿。少し縁高で、取り皿としても果物やお菓子を盛るにも使いやすい。見込みの絵は、花が咲いて実がなって、鹿が居て長閑な自然の森を思わせる。もしここに鴈が飛んでいたら面白いのに、なんて考える。
器 古染付皿 径13,5cm 高3cm