No.176 蕗ご飯
春先に蕗のとうを天麩羅で楽しんだ、その蕗が裏庭で育ってちょうど食べ頃になった。売られている蕗ほど太くないけれど、育ったものから収穫して、季節の香りを楽しませてもらう。定番のお出汁で煮たのはもちろん美味しいけれど、初めてふきご飯作ってみた。下茹でした蕗をお出汁と酒で色を残す程度に軽く火を入れて下味をつけ、炊き立てのご飯に混ぜ込んだ。淡く透き通るような緑の蕗は、熱いご飯と共に口に入れるとふきの香りが立って、しゃきしゃきした食感がアクセントになり、春野菜の風味を味わった。
蕗は、収穫したら洗ってたっぷりの塩で板摺りし、茹でて水に晒す。表皮をスジと共に取り除く、手間が掛かるけれどこの作業が結構好きだ。ふきの切り口から周囲のぐるりを、指でバナナの皮を剥くように剥ぐ。その剥いだ外皮をまとめて持って下方へ引くと気持ちよく皮が剥げる。何も考えずに皮を剥く事だけに集中する時間。これも毎年の季節の仕事のひとつと思うと楽しめる。
蕗の色を楽しみたくて黒の漆の椀に盛った。普段使いの椀で、漆が痛んで浮いて来ている所もあるけれど、時と共に真黒だった漆が少し透けて赤みを帯びている、この柔らかい色が美しい。厚底で安定感のあるこの形も気に入っている。いつ、どこで作られたものかは判らないけれど、木の温もりが手に馴染む。
器 黒漆 椀 径12,5cm 高7cm