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うつわ道楽

No.177 アスパラガスの春巻き

 北海道出身の友人から、アスパラガスが届いた。柔らかくて香りが高く、とても美味しい。アスパラは大好きな春野菜で季節には度々買っている。塩茹やバターソテーは日常的に良く作る。今回は少し手間をかけて春巻きを作った。食材は衣で包んで油で揚げる事で、中は蒸された状態になるため、香りが閉じ込められて美味さが一層際立つ。春巻きは、市販の皮で包んで揚げるだけ、と手軽なので包む食材を工夫して色々試している。

 アスパラは軽く塩茹でして粗熱を取る。春巻きの皮の上にスライスしたハムを置き、その上にアスパラを載せて包んで揚げる。この料理には、勤めていたオフィスの近くにあるチャイニーズレストランで出会った。もう随分前の事だ。確かその時はアスパラは切らずに長いままだったと記憶している。揚げる鍋の都合もあって、自分で作る時は半分の長さに切って並べて包むようにしている。ハムの旨味と塩味で、何もつけずにそのままで丁度良い味になる。揚げたてを頬張るとアスパラガスの良い香りが口に広がる。

 戸棚の奥に仕舞い込んでいた鍋島の皿を久しぶりに使いたくなった。鍋島焼は、佐賀県の大川内(おおかわち)に在る。1675年に同じ佐賀県の有田から30人程の腕の優れた陶工達を連れて来て開かれた、鍋島藩の御用窯。御用窯とは、一般に出回ることのない将軍や老中などに献上するための焼物のみを作る窯の事。それまでは有田の窯で焼かれていたが、他に無い高い技術が漏洩するのを防ぐためにあえて険しい地形の大川内に移され、人や物の出入りも厳しく取り締まっていたそうだ。この大川内が選ばれたのは、鍋島焼の特徴のひとつである、青磁の原石が採掘される土地だった事も理由のひとつらしい。

 鍋島焼は、染付け(呉須)、色絵、青磁の3種類に分類される。この皿は呉須で青海波と更紗調の紋様が描かれ、上部にはまるで空を示すかの様な青磁の透明感のある深緑。鍋島焼の特徴的な、抱えた皿の見込みに大胆な図柄。精緻な筆使いで、御用窯の品の高さを感じる。この皿は、裏に呉須で3ヶ所に絵柄が描かれている事、また高い高台には櫛に似いる事で “櫛歯文“ と呼ばれる縦のラインが入っているのが特徴。洋にも和にも映える器で、つい使いたくなって近頃は毎日のように使っている。

器 鍋島焼 青海波更紗文皿  径20cm 高6cm