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うつわ道楽

No.180 カプレーゼ

 毎年ベランダ菜園で育てているバジル。今年も去年の種を発芽させたのが、大きな葉を繁らせるほどに育った。初夏の強い陽射しで日々育つ様は驚くほど早い。さっそく、バジルの香りを楽しもうとカプレーゼを作った。

 大好きなフルーツトマトは皮が厚め。口に残るのが気になり、湯むきして使っている。モッツァレラチーズとバジルを盛り合わせ、軽く塩を振ってオリーブオイルを回しかける。たったこれだけなのに、完璧な味のハーモニーに、食すたびに感動する。

 皿は古染付。古染にはよくある、皿の縁に虫食いと呼ばれる釉薬が爆ぜた跡が無いのは、縁に細く鉄釉が回し掛けられているからだろうか。見込みに描かれているのは、一枚の大きな葉と『梧桐葉落 天下皆秋』の文字。”秋になるといち早く落ちる梧桐の葉が散るのを見て、秋の訪れを知る”と季節の移り変わりを読んだ詩なのだそうだ。梧桐とはどんな木なのか知らないけれど ”桐”の字が使われているからその一種だろうか。葉が、まるで標本のように大きく一枚描かれているのを見ると、きっと大きな葉なのだろう。少し調べたら、同じ詩と葉が描かれた皿は他にも有るらしく、この時代には知られた詩だったのかもしれない。初夏に向かう今、この皿の図柄は少し季節感が違うけれど、皿の縁に描かれた呉須の模様と鉄釉が、瑞々しいカプレーゼを縁取って美しい。

器 古染付 中皿  径13,5cm 高3,5cm