No.189 鮎の唐揚げ
今年も、岐阜の釣り人さんから鮎をいただいた。魚屋に並ぶ大きさの鮎は塩焼きで。稚鮎よりは大きく、わかさぎ程の大きさに育った鮎は唐揚げにしてみた。丸ごと骨も食べられるくらいにゆっくり揚げた。熱々を口に入れると、独特の青い芳しい香りが鼻に抜ける。添えたかぼすは、九州の親戚から送られたもの。各地の自然の恵みをありがたくいただいた。
揚げてあるのに、生きて水の中を群れて泳いでいるかのような鮎の姿が美しい。平たい皿は備前焼のたたき皿。たたき、とは文字通り粘土を平面に叩いて伸ばして成型する手法の事。何の上で伸ばすのか、でその表面感が皿に反映される。この皿には木の模様が浮かび上がっている。何の木だろうか、太く浮き出す節の渦巻と年輪。土と木と窯の火を操って、人の手によって作り出された皿だ。
鋭く切り取られた力強い皿の縁。全体に木の模様が浮かび上がり、桟切(さんぎり)と呼ばれる灰色と火襷が何とも美しく、絵のように見飽きない。この皿は、岡山県備前焼の名門窯、金重のものと思われる。が、人間国宝にもなった 金重 陶陽 の作かどうかは不明。火や灰の加減で、意図した通りに焼き上がるとは限らないこの備前焼も、ある意味、土と火の自然の恵みかもしれない。
器 備前焼 たたき角皿 径21x21cm 高2cm
作 備前焼 金重窯