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うつわ道楽

No.190 梅酒ソーダ

 暑い日の夕方、氷を入れてソーダ水で割った梅酒ソーダを飲んでホッとする。何年も前に凝って梅酒を作っていた時期があった。焼酎の梅酒の他に、ブランデーの梅酒にもはまっていて、2種類作っていたのだけれど、長い間仕舞ったままだった。それを梅酒のテレビCMを見ていて、ふと思い出したのだ。多分、もう10年は経っているだろう。味がまろやかになっていてとても美味しい。

このグラスは、随分以前から我が家に有る。とても薄く、開いた口周りに金が載って、模様が浮き出している。メーカーの名はどこにも入っていないけれど、ヨーロッパで作られたものには違いない。いつ頃の時代のものかも不明だけれど、口元の金は綺麗に残っていて、大事に使われて来たのだろうと思う。

 食器は、使ったら必ず洗う。どんな器も、ただ盛られた料理を食べたり飲んだりして楽しむだけではなく、また次に使う時まで、洗って、納めて、の繰り返しだ。私は、後片付けは決して好きではないけれど、器を洗う作業は、盛るのと同じくらい大事にしている。手に取って、裏返して、重みや厚さを感じながらくまなく撫で、触る。洗う作業を通して、文字通り器と触れ合う事で器への理解が深まって来た、と思う。

このグラスは、薄いから洗う時は力加減に気を付ける。そして気が付いたのは、底面が真平。濡れたシンクに置くと、その僅かな傾斜でグラスが滑ってしまうほど滑らかだ。毎回、洗うたびにとても気を使う。グラスがツッと滑ると、雪道で自分が転びそうになったような気分でどきっとする。面倒と言えば面倒だけれど、人間のように “あなたはそう言う性格だったわね” と思いながら接すると、器との付き合いも楽しくなる。

器 金模様のグラス  径7cm 高11,2cm

作 不明