No.225 山椒の葉の佃煮

少し前、4月になる頃だろうか、ただの棒のようだった小さな山椒の木のあちらこちらに小さい緑色の芽が出始めた。日に日に葉は育って生い茂り、料理に飾るには大きすぎるほどになった。とは言えまだ出たばかりの葉は柔らかい。思い立って両手に山になる程の葉を摘み取り、佃煮を作ってみた。
よく洗ってから下茹でをして灰汁を取る。絞ると片手で握れるほどの量になった。初めてだし、試してみるにはこのくらいの量がちょうど良いかもしれない。葉が絡まない程度の大きさに包丁で切ってから出汁、醤油、酒、味醂と砂糖を併せた汁で数分煮て冷ます、を何度か繰り返して味を染み込ませつつ汁を煮詰める。
若い葉とは言え、葉の真ん中の細い茎は少し舌に触るけれど、えぐ味の少ない食べやすい佃煮が出来た。以前食べた山椒の葉の佃煮は、口の中がカッと痺れるほど強烈だった。最初の下煮の時間を短くすればきっともう少し刺激的な仕上がりだっただろうか、と思う。早速炊き立てのご飯で春の香りを味わった。
盛り付けた蓋物は第16代 永楽 善五郎(即全) の赤絵金蘭手。福禄寿の3文字が散りばめられ、小振りながら華やかな器だ。少し厚手の白磁で、蓋裏と見込みに絵は無い。見た目が地味な佃煮だから、こんな器に盛ってみるのも楽しい。

器 赤絵金蘭手 蓋物小鉢 径9,2cm 高6,5cm(9,5cm蓋込)
作 第16代 永楽 善五郎 即全