No.246 秋刀魚と大葉のロール巻きフライ

昨年とはうって変わって、今年は魚屋やスーパーに秋刀魚が大量に並んでいる。全体にサイズは小さめだ。これだけ量が有ると、塩焼きで秋の風情を、とばかりは言っていられないようで、量を捌くために売り方も工夫されている。頭とお腹を取ったものや、開いて中骨を外してある物。買い手の手間を省き、料理のバリエーションが広がるように、と売る側の努力が伝わる。普段は見かけない生で開きになった秋刀魚を見て、大葉を巻き込んでフライにしたら美味しそうだと思いついた。
ロールしてフライにするのは面倒だけれど、魚は開いて中骨も外してあるからその分の手間は省ける。とは言え半身の真ん中にある骨は骨抜きで丁寧に外す。塩胡椒と少しの小麦粉をはたいて、中の大葉と秋刀魚の身が馴染むようにして巻き込む。粉、卵、パン粉を付けてゆっくり揚げる。そのままの姿で料理した塩焼きだと食べる時に骨を取りながらだけれど、ここまで加工すると骨が無いので食べやすい。脂の乗った秋刀魚は大葉の風味でさっぱり。レモンを絞ってぱくぱく、あっという間に平らげた。野菜もフライにすると中が蒸された状態になって美味しい。ついでに買ってあった生椎茸も揚げて盛り合わせた。
皿にしては見込みが丸味を帯びて深くなっている。呉須で、吹墨を使って絵柄を魅力的に見せている。この皿は初期伊万里の写しで時代も作者も不明だ。初期伊万里は “生掛けで 1/3 高台” がお約束なのだそうだ。生掛け、とは土を成形して素焼きをせずに絵付けをする事。裏の高台は皿の直径の 1/3 の大きさで、普通の皿に比べると小さい。支える土台が小さい分、皿は縁に向けて高さを出し、重さによるダレを防いでいるのだろう。だから見込みが深い。なるほど、この皿を成立させるための深さや形なのだと納得する。この皿の見本となった初期伊万里も元々は古染を倣ったものだろう。強度も厚さも扱いやすいこの皿は、普段使いに楽しめる。でも、この元となった初期伊万里、その前の古染付け。叶う望みとは思えないけれど、3枚を並べて眺めて見たいものだ。

器 初期伊万里写 吹墨皿 径21,5cm 高4,5cm
作 不明