No.31 蓮根餅
笹の葉に包まれた蓮根餅。蓮根の澱粉と和三盆で作られた生菓子で、舌に乗せるとすっと消えていくまろやかな甘さ、葛や寒天とは違った独特の舌触りで、夏によく冷やしていただくととても美味しい。深い緑の笹の葉に包まれた姿もとても涼しげで、見た目でも汗が引く。薄茶でいただくのも勿論美味しいけれど、真夏の暑い日なら冷たいお煎茶が欲しくなる。
この涼しげなお菓子をどんな器に盛ろうか。色々考えて選んだのは備前焼の兜鉢。軽く霧を吹くと、良い感じに笹の葉の緑も冴える。土の肌と色、緋襷のアクセントが備前焼の魅力だが重い器が多い。しかしこの鉢は備前焼にしてはかなり薄い作りで、見た目も軽やかだ。
広くゆったりとした見込みのこの兜鉢は、金重陶陽(1896〜1967)のもの。明治29年に岡山県に生まれ、備前焼の陶工として初の人間国宝に選ばれた。江戸中期以降、伊万里焼や九谷焼に押されて人気を失っていた備前焼を再興された中興の祖と称される名工だ。
器 備前焼兜鉢 径28,5cm 高6cm
作 金重陶陽