No.40 生ハムと無花果
深い緑の織部釉が美しいこの皿。北大路 魯山人のもの。何を盛っても映えそうだが器負けだろうか、納得できる盛り付けが難しい皿だ。皿の周囲の輪花に緑の釉薬が溜まり、その深い色と土肌を見せた中央部分の色のコントラストが美しい。
前回、果物を盛り合わせた時にも書いたが、これは近頃気に入っている無花果。一番のお気に入りは生ハムを載せた前菜だ。無花果の甘味に生ハムの塩味。ひと昔かふた昔前に主流だったイタリアンの定番のオードブルはマスクメロンに生ハムを載せたものだったが、元々本国イタリアでもメロンだけでなく、フルーツとの組み合わせは古くから有るレシピだ。私は無花果か、よく熟して柔らかく、香りが強くなった洋梨との組み合わせが好きだ。水分が多めのフレッシュタイプの生ハムを使って、無花果の柔らかい果肉と共に口に入れると香りと果汁が広がって思わず頬が緩む。合わせるなら、私はよく冷えた白ワイン。生ハムだから赤ワインでも良いけれど、赤なら軽くてさっぱりしたタイプを選ぶ。
北大路魯山人。多彩な才能を持つ類い稀な人だったそうだ。陶芸だけでなく、書、絵画、篆刻と多方面に才能を発揮し、その作品は多く残されていて現代でも私達を魅了する。器好きなら誰しも使ってみたいと思う。作家としてだけでなく、美食家としても知られ、プロデューサーとしても一流の人だったようだ。しかし天才はやはり変人。常人には理解できない我儘な行動で周囲の人は振り回され、諍いも多かった、と彼について書かれた本で読んだ。個人的には私も彼の作品にはとても魅了されるが、本人は身近に居たら苦労しそうだ。
器 織部釉 輪花取り皿 径16cm
作 北大路 魯山人