No.42 栗ご飯
この形態の器を、信玄弁当箱と呼ぶ。あの武田信玄に何か関係するのだろうかと調べてみたら、信玄の部隊が巾着袋にこの弁当を入れて持ち歩いた、と言う説を見つけた。陶器だと割れるし、重いので、素材は漆塗りのものだったと思われるが、巾着袋と言えば信玄袋にも繋がる。情報が少ないので定かではないが、名前の由来は、おそらくそういった経緯だったのだろう。
以前京都のお料理屋さん、美濃幸で店の名前の入った信玄弁当の器に盛り付けられたお昼のお弁当をいただいた事がある。もう、かなり昔の話だ。手を掛けたお料理がバランス良く2枚の大小の皿に盛り付けられていて、楽しくいただいた。信玄弁当を知ったのはその時。入れ子になったコンパクトさになるほど、と感心した。いちばん大きい下の器にご飯、2枚の皿を向付として使い、蓋は食べる時に汁物を入れる。中々合理的に出来ている。
この器は、4代 清水六兵衛のもの。四つの揃いで、それぞれに絵変わりで植物を描いているのだが、その鉄絵を使った画風や、大胆な轆轤目の凹凸に六兵衛らしさを感じる。
日中の陽射しは強いが秋風が吹き、栗の季節。毎年、季節になると一度は作る栗ご飯をこのお弁当に詰めてみた。今年の栗は小布施のもの。色は薄めだが粒が大きく、ほっくりしていて美味しい。向付の皿には常備菜のあれやこれやを盛り合わせ、これを持って紅葉狩りでもしたら風情があって優雅だろう、と想いを馳せる。
器 絵変わり信玄弁当 4揃 径12cm 高15cm
作 4代 清水 六兵衛