No.59 チョコレート と コーヒー
街に美しいチョコレートが並ぶ季節。毎年バレンタインデーが近付くと見られる光景だ。どれも工夫を凝らした意匠とパッケージで目移りする。一時期の義理チョコの風習も薄れ、友達への気軽なプレゼントや、家族、自分で楽しむために選ぶ人が多くなったようだ。私は特にスウィーツ好きと言う訳ではないが、やはり時々美味しいチョコが食べたくなる。コーヒーを淹れて、口の中で蕩けるカカオの香りを楽しむのは、とても贅沢な時間だ。
人気店に行列するデパ地下も一通り見たけれど決められずに、結局、地元の蜂蜜を使ったスウィーツ屋さんのトリュフにした。トリュフを盛ったガラスの皿は日本のもの。特に名のあるガラス作家さんや、薩摩切り子や江戸切り子、と言う物ではなく、多分昭和初期頃の切り子細工だろう。どこかの古道具屋さんで大分以前に購入したもので、素朴な味わいの有る皿だ。
今回の主役はシェリー(Shelley)のカップアンドソーサー。主張の強いアール・デコの特徴的なデザインで、1930年頃のものだ。シェリーは、それまでの紆余曲折を経て、Percy Shelleyが経営者となり、1910年にイングランドで誕生した窯だ。最盛期は1925〜1940年とされ、第二次世界大戦前までだったらしい。このカップアンドソーサーはシェリーの最盛期で、時代もアール・デコの真只中の頃に作られた、ということになる。
シェリー窯が全てアール・デコデザインと言う訳ではなく、もっと優美な花柄のモチーフの物も多く有る。カップアンドソーサーにはシェイプで名前が付けられていて、同じシェイプで違う絵柄や色を纏ったバリエーションが作られていた。この、鋭角的なシェイプと前衛的な持ち手のカップアンドソーサーは、ヴォーグシェイプと呼ばれる。
器 Shelley(England) VOGUE shape カップアンドソーサー カップ径7,5cm 高6,5cm ソーサー径12cm