No.71 中華粽(ちまき)
端午の節句。五節句のひとつで、菖蒲の節句とも言われるそうだ。端、は最初という意味があり、5月の最初の午の日を指す。現在はグレゴリオ暦で毎年5月5日と決まっている。女の子の雛祭りに対して男の子の成長を願う日として定着しているが、今の時代、子供とはいえここまではっきり男女の区別をするのは躊躇したりもする。が、これらは日本で奈良時代に始まった風習だ。文化として深くこだわらずに受け継いで行きたいものだ。
この日に食すのは、柏餅や餅を甘く味付けて笹の葉で巻いたちまき。これは日本の風習で、中国では餅米を竹の皮で包んだ粽を食べることも有るらしい。昔、よく作った中華粽を久しぶりに作ってみた。餅米と豚肉、筍、干し椎茸、干し海老、中心にはうずらの卵。簡単に出来るつもりが、竹の皮で包む所まで来て苦戦した。包み方は覚えているのだが中々上手くいかず、料理も普段からの訓練なのだと感じる。
この脚付きの青磁の鉢。箱には『青磁石菖鉢』と有り、以前の持ち主が札を付けている。このような鉢は、本来食物を盛るのではなく立花など花を生けるためのもの。中国、元の時代の物で、根津美術館蔵のものとよく似ている。花器なのは解っているけれど、粽を盛ってみたくなった。ちょうど食べたいと思っていたところだ。
3本の脚に支えられて、大きく開いたこの青磁の鉢は、天竜寺青磁とよばれるものだ。天竜寺船によって日本に渡って来たことに由来してそう呼ばれると言う説が一般的だ。そういえば日本史の教科書でその名が出て来た記憶がある。調べると、中国浙江省の竜泉窯(りゅうせんよう)で作られた青磁のひとつの様式で、室町幕府が、天竜寺造営のため明に派遣した貿易船が、この種の青磁を大量に持ち帰った事からこう呼ばれるようになったと。だが一説には、夢窓国師が天竜寺に伝えた香炉が高名だったため、との説もあるらしい。どちらにしても危険な船旅ではるばる大陸から海を渡って来て、長く大事に扱われて来たのだと思うと感慨深い。
青磁の色味は、もっと青が強かったり、黄味にに濁っていたりする物も多いけれど、この鉢の沈んだ緑の透明感と深味のある色合いが美しい。
器 青磁石菖鉢 径27cm 高9,5cm