No.82 フォー
前回の棒棒鶏の茹で鶏を煮た時のスープで何を作ろうか、と考えた。少し白濁した生姜風味、やっぱり麺類が合いそうだ。暑さの反面エアコンで冷えた身体に、優しい味のフォーを作った。フォーはベトナムの米を原料とした麺料理だ。中国や東南アジアで多い、ライスヌードルを使った料理には台湾のビーフンやタイのパッタイなどが有る。パッタイの麺もフォーと同じ、きしめん状の平たい麺だ。乾燥のライスヌードルをぬるま湯で戻して茹でる。味を整えたスープに茹で鶏とパクチーを飾った。
フォーを盛ったのは、三浦 竹軒(ちっけん)の鉢。京焼で1883年(明治16年)に窯を開いた初代 三浦 竹泉の三男で、父亡き後二代を継いだ兄が早世したため三代を継ぐことになる。しかしそれから10数年後の1921年(大正10年)、四代(兄の二代の息子)に代を譲り、自分はその後 竹軒 と名乗り作陶を続けている。初代の三浦 竹泉(父)は、13歳で高橋 道八に弟子入りし、陶芸を学んだ。竹泉は磁器の染付けが多いが、器用な方で、色絵や金蘭、祥瑞など代々、手法も多岐に富んだそうだ。書画を趣味としたそうで、その影響からか煎茶道で珍重され、お煎茶道具を多く作っている。
竹軒のこの鉢も、本来は菓子鉢と思われる。厚手でずっしりと重みのある鉢で、深さも有る。土に白薬を掛けた上に呉須で漢詩を書いている。釉薬が厚く掛かった所はガラス質になり細かな貫入が見える。轆轤目が浮き出た肌の表情が優しい。
器 漢詩染付深鉢 径 13,5cm 高 10cm
作 三浦 竹軒