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うつわ道楽

No.86 鱧

 関東で生まれ育った私が鱧を知ったのは、父の転勤で数年の間、関西に引っ越した頃だったろうか。住んだのは京都ではなかったのでそれほど身近ではなかったけれど、関東にいるよりは鱧に関する情報は多かった。数年で生まれ育った実家に戻って来たので、実際に鱧を口にしたのは大人になってからだったと思う。今や地元の魚屋で、開いて骨切りした鱧が買えるようになった。今年も季節になってから既に何回かいただいているけれど、今日は湯引きした鱧に梅肉のたれを掛けた。京料理でも定番の料理ではないだろうか、お料理屋さんで何度もいただいたことがある。

鱧の骨切りは、専用の鱧切り包丁を使用し、一寸(約3cm)に26筋の切り目を入れられるようになると料理人として一人前、と言われるのだそうだ。その骨切りの技術を持たないため、鱧は京都以外の地域で中々出回らなかったという。今はその技術も広まって来たということだろうか。

 近頃人気のある習い事の中に、金継ぎがあると知って驚いた。サステナビリティの流れに加えて、直しがアクセントになってお洒落、と若年層にも受け入れられているようだ。古い器やお道具に直しは付き物で、金継ぎ職人が居られて、古くからの技術が受け継がれている。ホツ(欠け)や入(にゅう、ひび割れ)の修理として漆に金や銀を使って直す。今は、漆に代わる樹脂などが有って、素人でも手軽に出来る手法、という事だと思う。が、それが習い事と呼ばれていることには少し戸惑った。もちろん大事なもの、気に入った器を修理して使い続けることはとても歓迎出来る事だし、そうして残って来た器を好んで使っている私にとっても喜ばしいことだ。器やお道具だけでなく、ニットや布の衣服にも、ダーニングという金継ぎと同じニュアンスの修理があり、最近は人気が有るようだ。

この、金継ぎのある小皿は唐津。そこそこ古い物ではあると思うが、いつの、誰の、というような能書のある皿ではない。素朴な唐津焼の皿だったのかもしれない。が、いつの時代だろうか新しくはない、しっかりした厚みのある金の直しが、更にこの皿の風格を増している。これぞ金継ぎの魅力、と思う。

器 唐津焼小皿  径11,5cm x10,5cm 高3,5cm

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