No.88 冷奴
京都の老舗のひとつ、たる源。寿司桶や御櫃、湯豆腐桶などが主な商品で、樽や桶を作り続けるお店だ。この小さな片手桶と猪口は、組ではなく別々に求めた物。桶は銅、猪口は銀の針金で締められている。9月とはいえまだ残暑の日に冷奴を盛った。塩でいただいても良いし、醤油なら別な小皿に。色の無い食材であっても木地のままの器はすぐ染みになるので気を使う。部分的に濡れると染みが出来るので、桶も猪口も使う前に全体を水に潜らせると染みになりにくく、綺麗に使うことが出来る。
冷酒は、4代清水 六兵衛の燗鍋に入れた。燗鍋は、その字の通り酒を入れてお燗する器の事だ。鉄や錫などの金属製の燗鍋も多く、焼物であっても昔はそのまま火にかけてお燗したそうだ。燗鍋はお茶事で使う懐石道具で、その素材に関わらず組み合わせるお猪口は漆と決まっている。今回は少し崩して、燗ではなく冷やした酒を入れ、猪口も漆ではなく木地のものを使い、涼しさを演出してみた。
六兵衛の燗鍋は、京焼らしいきめの細かい土で、薄手で優雅な作りが上品さを、丸いフォルムと小さな3本の脚が愛らしさを感じさせる。若松の図柄は新春向きと思うが、涼しげな絵柄が気に入って冷酒にしてみた。燗鍋はお燗が前提の器なので、持ち手が付く。この持ち手には葡萄の蔓が巻かれていた。古くなって朽ちていたので外したが、使い手を思いやった素敵な工夫だった。
器 燗鍋 幅14cm(口含) 高18cm(持ち手含)
作 燗鍋 四代 清水 六兵衛
器 片手桶 径9,5cm 高10cm 猪口 径4,5cm 高4,5cm
作 片手桶、猪口 たる源