No.6
数日前、家の近くを歩いていて咲きはじめの紅梅を見つけた。開いているのはまだ数輪だ。かなりの老木で、高さは私の背丈より頭ひとつ大きいくらいの小さい木だが、細い枝が天に向かって突き出し、その枝の一本一本に色付いた蕾が沢山付いている。 立春とは言えまだ冷たく澄んだ空気の中、律儀にもいち早く春の気配を届けてくれる。
古余呂技(こよろぎ)窯、川瀬 竹春は大好きな作家さんだ。白磁に黄や緑、青の釉薬を使って、ヘラで面を取った表面に柔らかな図柄の、なんとも優しい作風。それとは別に、この湯呑みのようにぽってりとした肉厚の白磁に、呉須、赤、黄、緑で古染の赤絵を模して描かれた作品も多い。
こよろぎ、とは変わった音だわ。とはじめ思ったが、竹春の作品を見ているとこの音が妙にしっくり来くる。この二代竹春が、父の初代と共に、1949年に京都から神奈川県大磯に移住し窯を持った。その後、1960年、父から独立して開いた窯を古余呂技窯と名付けた。古余呂技とは、以前大磯辺りをこう呼んでいたらしく、地名に由来するものらしい。
この湯飲みは最近ウチに来たもの。なるほど。竹春だわ。と納得する。一目で好きになった。実は、これでもお酒をいただいてみた。だがやはりこの湯呑みは、和菓子と一緒に緑茶をいただくのが似合う。
器 赤絵梅文 湯碗 古余呂技窯 二代 川瀬 竹春(順一)