No.97 ボルシチ
ロシア料理と認識されていたボルシチは、実はウクライナの郷土料理だそうだ。ソビエト連邦の時代、日本にもロシア料理のレストランが出来て、ロシア料理の代表的なメニューとして知られるようになったのだと思う。
当時ウクライナは独立した国ではなく、ソ連のウクライナ地方。私が子供の頃読んでいた、山岸 涼子さんの『アラベスク』というバレエ漫画にこの地名が登場するので知った。当時、バレエの最高峰はソ連で、ボリショイバレエ団が有名だった。この『アラベスク』の主人公はバレエを志す少女で、ウクライナのキエフ(現在のキーウ)出身。レニングラードのバレエ学校に進み、ボリショイバレエ団とも競い合う。当時のレニングラードは、今のサンクトペテルブルクだ。世界地図は様変わりしている。
最近は、地元の八百屋でも生のビーツが手に入る。長野や北海道で生産されている国産だ。ボルシチの、トマトとは違う紫がかった深い赤の色はビーツの色だ。蕪ような形だが、さとう大根の仲間だそうで、少し甘味がある。仕上げにサワークリームを加える。コクが増し少しの酸味が加わり、味が完成する。ボルシチは、本来長く煮込む料理ではないらしい。レシピを探すと牛肉も薄切りを使い、野菜の切り方も小さめだ。でも、肉も野菜もよく煮込んだ方が好みなので、私流のボルシチはすね肉を使って煮込んだシチュー風に作る。肉も玉葱も、人参も馬鈴薯もキャベツも、具が全てビーツの色に染まる。
ボルシチを盛ったのは、Susie Cooper(スージー クーパー)のスープ皿だ。アール デコ調の手描きの愛らしい花柄で、見込みがたっぷりした皿だ。スージー クーパーは、ミート皿などはよく使われていて、経年のナイフのキズが有る物も多い。が、このスープ皿は使われる頻度が少なかったのだろう。キズも無く、良い状態で残っていた。少し厚めに掛かった釉薬に貫入が入っていて、最近の工場生産とは違う温もりを感じる。
器 Susie Cooper スープ皿 径25,5cm 高4cm