No.98 栗の渋皮煮
毎年、季節になると一度は栗ご飯を炊く。お料理屋さん風にシンプルに栗だけのものや、栗とお揚げを入れたもの、鶏や人参、椎茸も入れて五目にしたり、とその時の気分で具材や味を変える。栗は炊き込みご飯にしなくても、煮物の具材のひとつにしても美味しいし、気が向くと渋皮煮を作る。作った渋皮煮は容器を煮沸消毒してきちんと保存すれば、おせち料理の盛付けにも使える。
今年は、八百屋の店先で何度も栗を見掛けていながら中々手を出さずにいた。なぜだろう、皮剥きを考えて面倒臭さが勝ったのだろうか。もちろんそれも有るけれど、何故か買おうと思う意欲が掻き立てられなかった。
しかし、この栗を見つけた時は何も考えずに手が延びた。大粒で艶が良く、その姿を見た瞬間に手間は関係なくなり、どうやって食べようか、と考えていた。素材の魅力なのだろう。その夜は栗ご飯、翌日は栗のリゾットでいただき、買った時の半量程、大きくて形の良い栗を渋皮煮にした。煮る手間は掛かるけれど、鬼皮だけ剥けば良いので楽にさえ感じる。シロップに浸けたまま一晩置いて、さて今年の出来はどうだろう。
この染附の蓋物 (食蘢 じきろう 蘢は本来は竹冠)は、東光山 旭亭(亀屋 旭亭)(1825〜不明)のもの。力強い筆使いと鮮やかな呉須の色で、その絵に引き込まれる。唐物写を多くし、祥瑞を得意とする方だ。京都 五条坂で生まれ、25歳で独立、東光山を号として染附を始めた。この器にも祥瑞風の縁取りが施されている。蓋には唐人と思われる男性が2人、先に羽根のようなものがついた箒状の長い棒を持っている。何かの物語の一場面だろうか。
お抹茶の主菓子を入れる器、とされる食蘢にしては小振りだが、この時代の文人達が好んだお煎茶の道具かも知れない。この大きさの蓋物なら、香の物やお惣菜を盛って食卓にも使えそうだ。
器 染附写 蓋物 径13cm 高8,5cm(蓋込)
作 東光山 旭亭