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うつわ道楽

No.107 きな粉餅

近頃はいつでも手軽にお餅が食べられる。大手メーカーのパックで日持ちのするお餅がスーパーで手に入るからだ。私が子供の頃は、年末年始となるとどこの商店もお休みだった。24時間年中無休のコンビニやスーパーなんて無かったし、生鮮商品はもちろん食パンも買い溜めをしてその期間のために備えたものだ。言うまでもなく飲食店も営業はしていない。だから当時は食料の確保が重要だった。その頃の親の世代は大変だったと思うが、私は年に一度のその不自由もお正月の儀式の一環として子供ながらに理解していた。『おせちも良いけどカレーもね』と言うCMの時代だ。今は元旦から営業している店舗もあり、返ってその不自由さが懐かしい。

その頃のお餅は今とは意味が違っていた。私の家は餅つきをする事はなかったので、お餅はいつも買っているお米屋さんに頼んでいた。予めお餅の注文表が来て年末に届けられる。関東育ちだからのし餅だ。今でもお正月のお餅は同じお米屋さんのつき立てを買っている。届きたてはまだ柔らかく、一晩置いて適度に硬くなってから切り分ける。当時は家族も多く、お正月のお餅の量も多かったから、切り分けるのもひと仕事。当時それは兄の仕事だった。その頃のお餅はお正月の特別感のあるご馳走だった。

当時、我が家で食べていたのは、焼いた餅を砂糖水のシロップに潜らせて、きな粉と白砂糖を併せたものを掛けたものだった。広辞苑に拠ると、これは正しいきな粉餅のレシピのようで、一般的にきな粉の餅を総称する安倍川餅は、きな粉をまぶした餅の上に白砂糖を掛けたもの、だそうだ。砂糖を別に掛けるか、きな粉と混ぜるか、の違いらしい。そうすると黒蜜好きな私が作るこの餅は、さしずめ安倍川餅の黒蜜バージョン、と言ったところか。

皿は古染付。古染には多く有る『芙蓉手』と呼ばれる模様で、このように少し縁が立ち上がった皿か鉢が多い。我が家は古染付が好きで、この芙蓉手の皿や鉢も大小様々有る。その中でもこの皿は古くから持っている物で、取り皿として使い勝手の良い大きさだ。

器 古染付芙蓉手皿 径15cm 高3,5cm

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