No.111 酒
半月ほど前、裏庭の梅に小さな蕾がたくさん付いているのを見つけた。冷たい風に縮こまるように固く小さな蕾だった。立春は過ぎたけれど、蕾はなかなか膨らまない。と思っていたら今朝、たった一輪開いているのを見つけた。今日は関東では珍しく冷たい雪の朝。そんな寒い日に咲くとは、と驚いた。開いたばかりの深い紅の花に真白い雪が積もって、なんとも風情の有る景色で見惚れてしまった。紅白で並んでいる梅の木は、毎年紅梅が早く、紅白が揃って満開を迎える事がない。
頑張って咲いた紅梅を見てこの盃を思い出した。薄く透ける白磁の花弁が儚げで美しい。こんな雪の寒い日は、この盃の花を見ながら熱燗を呑みたくなる。
この盃の作者は 第16代永楽 善五郎(即全 1917-1998)。即全は、14代の得全と、得全亡き後永楽窯を支えた妻の妙全の息子で、No.109 (2023/1/27)で使った土瓶の作者、15代正全の甥に当たる。即全が生きた時代は大正から昭和、と思うとこの盃も近しく感じる。
器 梅花盃 径8cm 高3,5cm
作 第16代 永楽 善五郎(即全)