No.114 五目ちらし寿司
ひな祭りが近づくと、毎年実家の古い雛人形を飾る。大正時代に作られているから、既に百年以上前の物だ。雛人形が飾ってあると、やっぱり当日はちらし寿司と蛤のお吸い物を供えたくなる。ばら寿司や押し寿司をよく作るので、大皿に盛り合わせる事が多いけれど、今年は五目ちらしにして個別に盛った。酢飯にはお揚げと筍、人参、椎茸、蓮根そして白胡麻を混ぜ込んだ。飾り付けは卵の黄色と菜の花の緑、いくらと紅生姜の赤。大好きなこの皿に合わせて、色を選んで盛り付けた。
呉須の網模様に、素朴で色とりどりの花が飛ぶこの皿は、古染付と称される古い中国の陶磁器の中でも特に『天啓赤絵(てんけいあかえ)』と括られるもので、この皿の裏の高台内にも天啓年製と呉須で書かれて在る。
資料によると、『古染付(こそめつけ)は明末・天啓年間(1621~27)あるいは崇禎年間(1621~44)頃に作られ、江西・景徳鎮の民窯で焼かれた染付磁器の事をいう。天啓赤絵は古染付と同じく天啓年間(1621~27)にはじまり、景徳鎮の民窯で焼かれた所までは同じだが、染付(呉須)ではなく赤絵のこという。萬暦まで続いた官窯様式から脱却した古染付に、朱・緑・黄で上絵付を施しているもの』とある。
年に一度のひな祭り、この皿を箱から出して大切に使わせていただいた。
器 天啓赤絵 網手平鉢 径23cm 高3,5cm