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うつわ道楽

No.120 若竹煮

 今年は収穫量が少ないそうで、例年より少し遅く九州の筍が届いた。小振りで土の付いた筍を軽く洗って糠と鷹の爪を入れた大鍋で茹でる。立ち昇る湯気も筍の良い香りで、春を感じる瞬間。その晩は茹で汁に漬けて、翌朝きれいに洗って余分な皮を取り、水に浸けて冷蔵庫で保存する。

夕飯は、筍ご飯と若竹煮。贅沢にたくさんの筍を堪能した。新芽が勢いよく出てきた、庭の山椒の葉を摘んで添える。筍が少し遅めな分、山椒の葉は少し育ってしまったけれど、洗った葉を掌でパンと叩くと良い香りが立ちこめる。

ところで今更だけれど、この『若竹煮』という料理の名前。何も考えずにわかめと筍だからね、と思っていたけれど、この若、は若いという字だ。読み方の音だけで単純にわかめと思っていた。本当に今更でお恥ずかしい話だけれど。ただ、調べたら由来は想像の範疇だった。春の〝若〟いわかめと筍の〝竹〟。日本語は奥深い。

この若竹煮は北大路 魯山人の染付の鉢に盛った。薄く薄く作られた白磁に、呉須で縁を取った『大』『吉』『羊』の漢字を側面に大胆に書いている。反った口からなだらかな丸みが高台まで続く、見込みの広がりが大らかさを感じる。さっぱりした意匠ながら垢抜けていて、盛る料理を引き立ててくれる。

器 染付 大吉祥鉢  径19,5cm 高8cm

作 北大路 魯山人

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