No.236 キンパ

色とりどりの具材を巻いた太巻き。海苔でしっかり巻いて、切り分けた断面が美しく、食欲をそそる。見た目がそっくりな日本の太巻きと韓国料理のキンパは食べると味はずいぶん違う。お寿司の一種で酢飯を巻く太巻きに対してキンパのご飯の味付けは胡麻油と塩。
雑誌に、キンパの作り方が載っていた。冷蔵庫に少しずつ残った食材が上手く使えそう、と気が付いて初めて作ってみることにした。食べた事はあるけれど、作ろうと思ったのは初めてだ。そこに載っていた “基本のキンパ” とされた具材は、カニカマ、人参のナムル、ほうれん草のナムル、きんぴらごぼう、錦糸卵、べったら漬け。カニカマの残りときんぴらごぼうは有るし、人参とほうれん草も有る。錦糸卵もすぐに作れる。べったら漬けは無いけれど、頂き物のたくあんで代用出来そうだ。肉ではなくカニカマを使う所も初心者には嬉しい。かなり具沢山になって巻くのが難しかったけれど、色も栄養バランスも良い、初めてのキンパが完成した。
見た目に海苔が艶々なのは韓国海苔を使っているのかと思っていたけれど、巻いた後に胡麻油を塗るのだそうだ。見た目がそっくりな両国の海苔巻、日本の海苔巻きが韓国に伝わったものが起源という説も有るが、韓国独自の食文化として発展したという説もあるらしい。古代から交流が有った最も近い隣国だから、食文化も影響を与え合っていても不思議はない。
存在感のある叩きのお皿は伊賀焼、谷本 景 (1948〜2024)の作。伊賀焼の復興と普及に尽力した 谷本 光生 の長男で、若い頃に欧州各地を美術研修で巡り、パリで銅版画を学んだ後、1977年に三田窯を継ぐ。伝統的な古伊賀を踏まえながらも、絵画的要素も取り入れて独自の作風を作ったとされる。叩いて平たくした土板に三脚で高さを出し、中央は重みで垂れて自然な窪みが出来ている。荒い粒の混った土が整えていない縁に強い印象を与える。窪んだ皿中央と縁に回された円模様に釉薬が溜まり、伊賀の緑釉と火色のコントラストが美しい。

器 伊賀焼 叩き皿 径 22x20cm 高 4,5cm
作 三田窯 谷本 景