No.182 中華風冷奴
日本食を代表する食材のひとつ、豆腐。海外の和食ブームでも最初の頃から低カロリー、高たんぱく質として注目されていたと記憶している。その代表的な料理は、夏なら冷奴、冬なら湯豆腐や鍋物、味噌汁なら季節を選ばないし、厚揚げや油揚げも豆腐の仲間。そう言えば中国料理にも麻婆豆腐など、豆腐料理が有るし、やっぱり豆腐も中国から伝わった食品かしら、と調べてみたら思った通り、今から2200年前に中国で発明されたものだそうだ。紀元前200年、前漢高祖の時代に准南王劉安によって発明され、日本へは奈良時代に豆腐の製造法が伝えられたらしい。
伝わった当時は、中国に倣って同じ作り方をしていたと思うけれど、現在では日本と中国で少し違うそうだ。『日本では水に漬けて柔らかくした大豆を擦り潰し、それを煮てから絞って、豆乳を作る。しかし中国では、擦り潰した大豆の液は加熱せずに生のまま絞って豆乳を作る』らしい。『加熱して作る日本の方法はたんぱく質をより多く引き出すことができ、豆腐もなめらかな仕上がりになるのが特徴』だそうだ。
そうと知って、両国の豆腐料理の違いにも納得が行く。日本のなめらかな舌触りの豆腐は、そのまま味わう冷奴や湯豆腐に適している。その分崩れやすいので、すき焼きなどに崩れにくい焼豆腐が出来たのだろう。それぞれの食文化によって豆腐が進化し、違って来たのだ。ついでに気になって調べてみたら、チャンプルを作る沖縄の島豆腐は、思った通り現在でも中国と同じく加熱せずに絞って豆乳を作っているそうだ。
シンプルな葱とおろし生姜の冷奴はもちろん美味しいけれど、私がよく作るのは具沢山の中華風の冷奴。元々は、中学生の頃に家族で行っていた中華料理店で食べた冷奴がヒントだった。それは、豆腐の上にほぐした蟹と葱、胡麻油と醤油の風味のたれをかけた物。初めて食べたその冷奴に感動した。大人になって、その時の冷奴を思い出して、自分なりにアレンジして作ってみたのが、この盛り沢山の中華風冷奴。蟹の代わりに手軽に使える鶏のささ身、薬味の野菜も欲張って盛り沢山。搾菜を加える事で味にアクセントがつく。その時の気分で醤油か胡麻のドレッシング、どちらでも美味しく、少し辣油を垂らすと更に良い。暑い季節の食卓には度々登場するメニューだ。
今日は葡萄色の切子ガラスの皿に盛った。厚手のガラスは重量もあって存在感が有る。我が家に来てからも頻繁に使っているけれど、来た時から既に見込みには細かい傷がたくさん付いていた。以前の持ち主達にも好んで使われていたに違いない。どれ程の人達に使われて、どんな食卓を飾って来たのだろう、と考えると楽しくなる。
器 切り子ガラス皿 径18cm 高4cm
作 不明