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No.188 ニース風サラダ

 異例の事態で一年遅れて開催されたTOKYO 2020 から3年、Parisオリンピックが始まり、何かとフランスが取り上げられている。料理もファッションも長い歴史と共に洗練された文化の国。一味違う大人のお洒落に憧れる。

 地中海の青い海を思い描いてみる。海からの風を受けながら、冷えた白ワインと共に楽しむブランチ。名前の通り、ニース風サラダはそんな風景が似合う。海の恵みのツナと、オリーブ、茹で卵が入るのが特徴のこのサラダ。今日はレタスと馬鈴薯にトマト、いんげんなどをラリック (Lalique) のボウルに盛り合わせた。

この ルネ ラリック(René Lalique 1860-1945 )は、フランスのガラス工芸家で、自らの工房を持ち、アール・デコ、アール・ヌーボーの時代に香水瓶や食器、インテリアを飾るアイテムなど数多くの作品を生み出した(過去 No.30,36,104,156 の回にも登場)。 このボウルは、乳白色ガラスで涼しさを誘う。モチーフの名前は調べたけれど不明。海に漂う海藻のようにも見える。ビネガーとフレンチマスタード、オリーブオイルのシンプルなドレッシングでいただいた。

器 サラダボウル 径20cm 高8,5cm

作 ルネ ラリック(René Lalique )

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No.187 ストレートティー

”ヴィクトリア・ブーケ” と名付けられた、このカップ&ソーサーは、ハンガリー(HUNGARY) の陶器メーカー HEREND(ヘレンド)の代表的なシリーズ。HEREND は、ハンガリーの首都ブタペストの南西、ヘレンド村で1826年創立された。

この ”ヴィクトリア・ブーケ” は、HEREND の中でも古くから有るモチーフで、1848年に創作されたそうだ。我が家のこのカップ & ソーサーは最近の物だけれど、変わらず今もこのデザインが受け継がれている。鮮やかな色使い、ハンドペイントで多彩な花、葉、蝶の優美な絵付けが施され、更に金が器の縁を飾り、その華やかさは見惚れるほど美しい。

その名の由来は、英国のヴィクトリア女王。ハノーヴァー朝第6女王であるヴィクトリア(1819〜1901 在位は1837年から)が、1851年にロンドンで開催された最初の万国博覧会の会場で、出品されていたこのシリーズのディナーセットを気に入り、買い求めた事が由来とされる。その後、ディナーセットはウィンザー城で愛用され、英国貴族の間に広まったそうだ。

当時、これほど美しい器を作る技術はすごい事だったに違いない。こんな器でディナーをしていた王族、貴族の方々の生活やファッションはどんなだったのだろう、と想像が膨らむ。日常の煩雑さから逃れて、少し優雅なティータイムを楽しんだ。

器 ヴィクトリア・ブーケ カップ & ソーサー 

カップ 径9cm 高5,5cm ソーサー 径14cm 高2,5cm

作 HEREND (HUNGARY) 

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No.186 トマトソース

 今年も 鱧が魚屋の店頭に並んだ。ほんの10年前、関東で鱧は季節の短い間、何度か魚屋で見かける程度だったと思う。でもここ数年、鱧は夏になると必ず有って、欲しい時に手に入る食材となった。

 ”カラマリ”というイタリア料理がある。私が大好きな料理だ。烏賊をリング状に輪切りにして、衣をつけて揚げたもの。いわゆるフリットだ。少し厚みのある衣にレモンを絞ってトマトソースをつける。冷えた白ワインとの相性が素晴らしい。何となく今日は鱧の気分で買い求めてから、白身で淡白な鱧はきっとフリットにしたら美味しいのでは、と思い付き烏賊と海老も加えてフリットを作った。

フリットを盛り合わせたのは Susie Cooper のボウル。これは以前No.33 (2021/8/13) の回で人参のラペを盛って使っているので、今日の主役はトマトソースになった。こちらも同じく Susie Cooper。フリットを盛ったボウルは、帆船の、古いタイプのバックスタンプだが、今回の器は鹿のバックスタンプなので、時代的には今回の器の方が近世のものだ。ソース入れに使ったが、この器は本来はシュガーボウル。組み合わせてソーサーにしている皿もソーサーではなく同じ柄の小皿だ。この柄でカップ&ソーサーも持っていて、ひとり用のティーセットとして購入した。朱色と黒でまるでアルファベットの ”Q” を逆さにしたような、キュートな飛び柄が愛らしい。

花柄の大きいボウルとシュガーボウル、どちらも Susie Cooper で、少し時代は違うけれど、同じ華やかな朱色が使われていて組み合わせて使うと思った通りの統一感。楽しい時間を過ごした。

器 Susie Cooper シュガーボウル(径9cm 高4cm) 小皿(径13,5cm 高1cm)

作 Susie Cooper

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No.185 焼茄子

 代表的な夏野菜のひとつ、茄子。カリウムや食物繊維が豊富で、夏バテ解消にも良いそうだ。やはり旬の野菜は、その季節に身体が対応するために必要な要素が含まれていて、自然の恵みの奥深さに感動する。美しい茄子紺色の皮には、抗酸化作用の有るポリフェノールが豊富で、皮ごと食するのが効果的。とは言え今日は焼き茄子なので、香ばしく焼けた皮は外してある。我が家の焼き茄子は、白胡麻と削り鰹、おろし生姜と醤油でいただくのが定番だ。

 涼しげな空色の向付に盛った。これは、古余呂技窯 2代 川瀬 竹春のもの。六角形のフォルムが特徴的。竹春の器は、我が家のお気に入りなので、過去に何度も登場している。(No.6, 27, 51, 58, 122, 151, 152, 158) 柔らかく丸みのあるボディで、竹春の器にはよく有る、厚みの有る口の作り。そこにも黄の花と緑の葉が描かれて、食べる時に器を覗き込む目を楽しませてくれる。絵の輪郭は釘彫で掘られ、そこに青、黄、緑、白、紫の透明感のある五彩が彩っている。見込みは白磁の白で絵は無いが、轆轤でついた渦巻きが表情を加えて美しい。

器 五彩 南蛮花鳥文 向付 径13cm 高6,5cm

作 古余呂技窯 第2代 川瀬 竹春

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No.184 カルピス

 今はまだ梅雨にもかかわらず、もう真夏かと思うような強い陽射しが照り付ける。こんな蒸し暑い日は甘酸っぱいカルピスが美味しい。このブログで2回目の登場となるカルピス。前回は、No.34(2021年8月20日)で、ガラス作家、江波 冨士子さんの鯛の模様のコップを紹介した。

 今年で105周年を迎えるカルピスは、1919年(大正8年)7月7日に販売が開始された。だから七夕の日はカルピスの誕生日。発売当時のカルピスはビン詰めで紙箱に入って、中身の味とはかけ離れた、まるで養命酒の様な包装だったらしい。さすがに外見と中身のギャップが有ったのだろう、1922年に瓶を爽やかな水玉模様の包装紙で包んだ形態に変わった。この水玉模様は、発売日の七夕に因んで天の川をイメージしたもの。1922年の最初の包装紙は、青地に白の水玉模様だったが、その後1949年(昭和24年)に配色を逆にし、私達の見慣れた白地に青の水玉に変わったのだそうだ。

 カルピスを作るための乳酸菌、カルピス菌は大正時代からずっと同じ菌が使われていると言う。新鮮な牛乳から脂肪分を取り除いたものにカルピス菌を加え、発酵させ、発酵することで増えたカルピス菌の一部を保存タンクに戻す、ということを続けて、秘伝のタレのようにカルピス菌を代々受け継ぎながら守っているのだそうだ。

この ”朝顔グラス” と呼ばれるガラスコップは、売り物ではなくノベルティとして作られたもの。何度も代替わりして、少し前まで作られていたらしい。調べたけれど、最後に作られたのがいつか、は解らなかった。でもかなり長い期間作られていたらしく、調べると様々な朝顔グラスが作られて来たのがわかる。

この、縦書きのカタカナロゴのこのグラスの時代は昭和の半ば頃だろうか。後半に作られたものは、ロゴはアルファベットだし、その前はカタカナでも横書き。この縦書きのカタカナはそれ以前と思われる。とても小振りで、喉が渇いている時にはこれでは足りないな、と思うけれど、シンプルでキッチュな愛らしさがある。

器 朝顔グラス  径7cm 高9,5cm

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No.183 枝豆

 枝豆と冷えたビールは完璧な組み合わせで、私の夏の楽しみのひとつ。今時の表現で言うと “マリアージュ” だろうか。枝豆は豆腐や味噌の材料となる大豆と同じだが、未成熟で緑色の状態の時に収穫したものを枝豆と呼ぶ。そのまま収穫せずに成熟させ、色が枯れて乾燥したものが大豆、となる。

どちらも豆である事に変わりはないが、枝豆は生鮮食品の緑黄色野菜に分類されていて、豆類の大豆とは区別されているらしい。最近の枝豆は、大豆とは品種違いの黒豆や茶豆の枝豆もあり、更に細かく品種が別れている。八百屋の店先にも常に数種類並んでいて、どれを買おうか迷ってしまう。

美味しい茹で方には色々方法が有るけれど、私は茹でる前にたっぷりの塩で軽く揉み込み、10分程度置いてから沸騰した湯で茹でている。どちらかと言うと少し早めに上げて、歯応えが残るくらいが好み。茹でる時の湯気に枝豆の香りが強く立つ時は美味しい枝豆の印で、茹でたての熱い豆をつまみ食いする手が止まらない。

 枝豆を盛った見込みは三島、外側に刷毛目の模様の小鉢は 、第2代 清水 六兵衛(1790〜1860)のもの。江戸後期の頃の人だ。鉢は角が反って開いているので、見込みの白く浮き出た化粧土の模様がよく見える。綺麗に並ぶ可愛らしい模様は眺めていて飽きることがない。土色の釉薬に温かみのある乳白色が馴染み、優しい色合いで瑞々しい枝豆の緑が良く映える。

器 内三島 外刷毛目 角鉢  径18×17,5cm 高6cm

作 第2代 清水 六兵衛

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No.182 中華風冷奴

 日本食を代表する食材のひとつ、豆腐。海外の和食ブームでも最初の頃から低カロリー、高たんぱく質として注目されていたと記憶している。その代表的な料理は、夏なら冷奴、冬なら湯豆腐や鍋物、味噌汁なら季節を選ばないし、厚揚げや油揚げも豆腐の仲間。そう言えば中国料理にも麻婆豆腐など、豆腐料理が有るし、やっぱり豆腐も中国から伝わった食品かしら、と調べてみたら思った通り、今から2200年前に中国で発明されたものだそうだ。紀元前200年、前漢高祖の時代に准南王劉安によって発明され、日本へは奈良時代に豆腐の製造法が伝えられたらしい。

伝わった当時は、中国に倣って同じ作り方をしていたと思うけれど、現在では日本と中国で少し違うそうだ。『日本では水に漬けて柔らかくした大豆を擦り潰し、それを煮てから絞って、豆乳を作る。しかし中国では、擦り潰した大豆の液は加熱せずに生のまま絞って豆乳を作る』らしい。『加熱して作る日本の方法はたんぱく質をより多く引き出すことができ、豆腐もなめらかな仕上がりになるのが特徴』だそうだ。

そうと知って、両国の豆腐料理の違いにも納得が行く。日本のなめらかな舌触りの豆腐は、そのまま味わう冷奴や湯豆腐に適している。その分崩れやすいので、すき焼きなどに崩れにくい焼豆腐が出来たのだろう。それぞれの食文化によって豆腐が進化し、違って来たのだ。ついでに気になって調べてみたら、チャンプルを作る沖縄の島豆腐は、思った通り現在でも中国と同じく加熱せずに絞って豆乳を作っているそうだ。

 シンプルな葱とおろし生姜の冷奴はもちろん美味しいけれど、私がよく作るのは具沢山の中華風の冷奴。元々は、中学生の頃に家族で行っていた中華料理店で食べた冷奴がヒントだった。それは、豆腐の上にほぐした蟹と葱、胡麻油と醤油の風味のたれをかけた物。初めて食べたその冷奴に感動した。大人になって、その時の冷奴を思い出して、自分なりにアレンジして作ってみたのが、この盛り沢山の中華風冷奴。蟹の代わりに手軽に使える鶏のささ身、薬味の野菜も欲張って盛り沢山。搾菜を加える事で味にアクセントがつく。その時の気分で醤油か胡麻のドレッシング、どちらでも美味しく、少し辣油を垂らすと更に良い。暑い季節の食卓には度々登場するメニューだ。

 今日は葡萄色の切子ガラスの皿に盛った。厚手のガラスは重量もあって存在感が有る。我が家に来てからも頻繁に使っているけれど、来た時から既に見込みには細かい傷がたくさん付いていた。以前の持ち主達にも好んで使われていたに違いない。どれ程の人達に使われて、どんな食卓を飾って来たのだろう、と考えると楽しくなる。

器 切り子ガラス皿  径18cm 高4cm

作 不明

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No.181 いさきの刺身

 旬のいさき。あまり馴染みがなかったけれど、地元の魚屋の店頭で美味しそうな半身が出ていたので買ってみた。元々、淡白な白身で、塩焼きでいただくことが多いけれど、生のいさきの身は、鯛よりは少しピンクががかった透き通るような白身で、適度に脂が有ってとても美味しい。

 刺身用の半身を買って来て自分で切り分けたら、薄く切ったつもりでも思ったより厚く、見た目も少し暑苦しい盛り付けになってしまった。やはりお料理屋さんのようには行かないものだ、と思いながらとても美味しくいただいた。

 この舟形の皿は、野々村 仁清を模して第2代 清水 六兵衛が作ったもの。白濁した釉薬の垂れた跡が模様にもなって、表情に変化が有って美しい。仁清を模しただけあって皿は薄作り。5枚組の内のこの皿は、窯の火の具合で見込みの中央に少しだけ赤味が強く出てピンク色。皿はそれぞれが釉薬の垂れと色の出方に違いがある。きめの細かい土とへらで両端を切ったシャープな舟形は、洗練された上品さを感じる。

器 仁清 向付 舟形皿 5枚組  径14x10cm 高3,5cm

作 第2代 清水 六兵衛

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No.180 カプレーゼ

 毎年ベランダ菜園で育てているバジル。今年も去年の種を発芽させたのが、大きな葉を繁らせるほどに育った。初夏の強い陽射しで日々育つ様は驚くほど早い。さっそく、バジルの香りを楽しもうとカプレーゼを作った。

 大好きなフルーツトマトは皮が厚め。口に残るのが気になり、湯むきして使っている。モッツァレラチーズとバジルを盛り合わせ、軽く塩を振ってオリーブオイルを回しかける。たったこれだけなのに、完璧な味のハーモニーに、食すたびに感動する。

 皿は古染付。古染にはよくある、皿の縁に虫食いと呼ばれる釉薬が爆ぜた跡が無いのは、縁に細く鉄釉が回し掛けられているからだろうか。見込みに描かれているのは、一枚の大きな葉と『梧桐葉落 天下皆秋』の文字。”秋になるといち早く落ちる梧桐の葉が散るのを見て、秋の訪れを知る”と季節の移り変わりを読んだ詩なのだそうだ。梧桐とはどんな木なのか知らないけれど ”桐”の字が使われているからその一種だろうか。葉が、まるで標本のように大きく一枚描かれているのを見ると、きっと大きな葉なのだろう。少し調べたら、同じ詩と葉が描かれた皿は他にも有るらしく、この時代には知られた詩だったのかもしれない。初夏に向かう今、この皿の図柄は少し季節感が違うけれど、皿の縁に描かれた呉須の模様と鉄釉が、瑞々しいカプレーゼを縁取って美しい。

器 古染付 中皿  径13,5cm 高3,5cm

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No.179 金目鯛の煮付

 これから旬を迎える金目鯛。少し時期は早いけれど、たまたま多く水揚げされたのか、魚屋さんの店先でお手頃な金目鯛を見つけた。お頭付きの大きな金目鯛も有ったのだけど、家の鍋には納まらないので、骨付きの半身の方を買って、切り身の大きさに切り分けて煮付けを作った。

 切り身は軽く塩をしてから熱湯を回し掛け、霜降りにする。鍋に酒、砂糖、醤油、味醂を合わせた煮汁を沸かして、切り身と生姜のスライスを入れ、落とし蓋をして煮る。煮汁が煮詰まって切り身に味が染みたら出来上がり。白いご飯と贅沢な煮魚で美味しくいただいた。

 使った鉢は私が大好きで、もう何度も登場している 第5代 清風 与平 のもの。赤い魚の煮付けは何に盛ろうか、と考えた時に力強い呉須の絵付けを選んでしまうのは、私の変わらぬ好みのようだ。と言うのは、以前の回を見返していたら昨年の2月、No.112 の回で同じ 清風 与平 の祥瑞の皿にきんきの煮付けを盛っていたのを見つけた。考える事は変わらないなあと思う。

鉢は、外側にも見込みにも文字や風景、漁をする人の姿が細かく描き込まれている。でも口の部分はぐるりと丸く、白磁の白が残されていて、その白が呉須で描き込まれた鉢の輪郭を際立たせ、中に盛った料理を引き立てる。やっぱり清風 与平 の器は好きだなあと改めて思った。

器 染付 漁翁図鉢  径20cm 高6cm

作 第5代 清風 与平