カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.192 桃のコンポート

 少し前に桃をいただいた。その桃は熟しても身が硬く、カリカリしていて林檎のような食感。常温で少し熟れるのを待ってみたけれど、個体差が有るようで全く柔らかくならない桃が2つあった。どうしたものかと考えて、思いついたのがコンポート。硬いのが幸いして、実を崩さずに種を外せて、コンポートには最適な桃と気がついた。

 水に砂糖、白ワインを加えて弱火で煮て、冷たく冷やして、味見をしたらとても美味。バニラアイスクリームと盛り合わせ、ミントの葉を飾ったら素敵なデザートが出来た。撮影に手間取ってアイスクリームが溶け始めたけれど、とても美味しくいただいた。

コンポートを盛った皿は、カットガラスの平皿。外側の底面に沿って大きく平らなカットがされていて、縁にぐるりと金が貼ってあるだけのシンプルなデザイン。購入したお店の仕入れ先はヨーロッパなので、ヨーロッパのどこかで作られたものと思われる。5枚揃っているけれど箱も無く、メーカー名や時代は不明。とても薄くてクリアなガラスのこの皿は、意外にも盛るものを選ぶ。ずっと難しいと感じていたけれど、今回でデザートを盛り合わせると映えるという事を学んだ。

器 カットガラス平皿  径14cm 高3cm

作 不明

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.191 冬瓜の海老餡かけ

 冬の瓜という名の夏野菜。冬瓜には際立った固有の味が無いので、お出汁や他の具材の味を含んで美味しくなる。私は煮物や中華風のスープによく使う。熱いままでもちろん美味しいけれど、暑い季節には早めに作って冷蔵庫で冷やしておくと、食欲の無い時でも冷たい喉越しで美味しくいただける。

餡掛けにする時は、鶏のそぼろにする事が多いけれど、今日は海老を使った。海老の赤い色が目に鮮やかで器と料理を引き立てる。使った白磁の染付は富本 憲吉のもの。箱には飯茶碗とあるけれど、小鉢ほどの大きさでご飯には少し小さい。透明感のある地肌に淡い呉須で梅の花が描かれている。とても涼しげな器で夏に使いたくなる。

器 染付 飯茶碗 五客組 径10cm 高8cm(蓋込み 本体5,5cm)

作 富本 憲吉 (瀬戸、品野辺りの窯にて)

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.190 梅酒ソーダ

 暑い日の夕方、氷を入れてソーダ水で割った梅酒ソーダを飲んでホッとする。何年も前に凝って梅酒を作っていた時期があった。焼酎の梅酒の他に、ブランデーの梅酒にもはまっていて、2種類作っていたのだけれど、長い間仕舞ったままだった。それを梅酒のテレビCMを見ていて、ふと思い出したのだ。多分、もう10年は経っているだろう。味がまろやかになっていてとても美味しい。

このグラスは、随分以前から我が家に有る。とても薄く、開いた口周りに金が載って、模様が浮き出している。メーカーの名はどこにも入っていないけれど、ヨーロッパで作られたものには違いない。いつ頃の時代のものかも不明だけれど、口元の金は綺麗に残っていて、大事に使われて来たのだろうと思う。

 食器は、使ったら必ず洗う。どんな器も、ただ盛られた料理を食べたり飲んだりして楽しむだけではなく、また次に使う時まで、洗って、納めて、の繰り返しだ。私は、後片付けは決して好きではないけれど、器を洗う作業は、盛るのと同じくらい大事にしている。手に取って、裏返して、重みや厚さを感じながらくまなく撫で、触る。洗う作業を通して、文字通り器と触れ合う事で器への理解が深まって来た、と思う。

このグラスは、薄いから洗う時は力加減に気を付ける。そして気が付いたのは、底面が真平。濡れたシンクに置くと、その僅かな傾斜でグラスが滑ってしまうほど滑らかだ。毎回、洗うたびにとても気を使う。グラスがツッと滑ると、雪道で自分が転びそうになったような気分でどきっとする。面倒と言えば面倒だけれど、人間のように “あなたはそう言う性格だったわね” と思いながら接すると、器との付き合いも楽しくなる。

器 金模様のグラス  径7cm 高11,2cm

作 不明

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.189 鮎の唐揚げ

 今年も、岐阜の釣り人さんから鮎をいただいた。魚屋に並ぶ大きさの鮎は塩焼きで。稚鮎よりは大きく、わかさぎ程の大きさに育った鮎は唐揚げにしてみた。丸ごと骨も食べられるくらいにゆっくり揚げた。熱々を口に入れると、独特の青い芳しい香りが鼻に抜ける。添えたかぼすは、九州の親戚から送られたもの。各地の自然の恵みをありがたくいただいた。

 揚げてあるのに、生きて水の中を群れて泳いでいるかのような鮎の姿が美しい。平たい皿は備前焼のたたき皿。たたき、とは文字通り粘土を平面に叩いて伸ばして成型する手法の事。何の上で伸ばすのか、でその表面感が皿に反映される。この皿には木の模様が浮かび上がっている。何の木だろうか、太く浮き出す節の渦巻と年輪。土と木と窯の火を操って、人の手によって作り出された皿だ。

鋭く切り取られた力強い皿の縁。全体に木の模様が浮かび上がり、桟切(さんぎり)と呼ばれる灰色と火襷が何とも美しく、絵のように見飽きない。この皿は、岡山県備前焼の名門窯、金重のものと思われる。が、人間国宝にもなった 金重 陶陽 の作かどうかは不明。火や灰の加減で、意図した通りに焼き上がるとは限らないこの備前焼も、ある意味、土と火の自然の恵みかもしれない。

器 備前焼 たたき角皿 径21x21cm 高2cm

作 備前焼 金重窯

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.188 ニース風サラダ

 異例の事態で一年遅れて開催されたTOKYO 2020 から3年、Parisオリンピックが始まり、何かとフランスが取り上げられている。料理もファッションも長い歴史と共に洗練された文化の国。一味違う大人のお洒落に憧れる。

 地中海の青い海を思い描いてみる。海からの風を受けながら、冷えた白ワインと共に楽しむブランチ。名前の通り、ニース風サラダはそんな風景が似合う。海の恵みのツナと、オリーブ、茹で卵が入るのが特徴のこのサラダ。今日はレタスと馬鈴薯にトマト、いんげんなどをラリック (Lalique) のボウルに盛り合わせた。

この ルネ ラリック(René Lalique 1860-1945 )は、フランスのガラス工芸家で、自らの工房を持ち、アール・デコ、アール・ヌーボーの時代に香水瓶や食器、インテリアを飾るアイテムなど数多くの作品を生み出した(過去 No.30,36,104,156 の回にも登場)。 このボウルは、乳白色ガラスで涼しさを誘う。モチーフの名前は調べたけれど不明。海に漂う海藻のようにも見える。ビネガーとフレンチマスタード、オリーブオイルのシンプルなドレッシングでいただいた。

器 サラダボウル 径20cm 高8,5cm

作 ルネ ラリック(René Lalique )

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.187 ストレートティー

”ヴィクトリア・ブーケ” と名付けられた、このカップ&ソーサーは、ハンガリー(HUNGARY) の陶器メーカー HEREND(ヘレンド)の代表的なシリーズ。HEREND は、ハンガリーの首都ブタペストの南西、ヘレンド村で1826年創立された。

この ”ヴィクトリア・ブーケ” は、HEREND の中でも古くから有るモチーフで、1848年に創作されたそうだ。我が家のこのカップ & ソーサーは最近の物だけれど、変わらず今もこのデザインが受け継がれている。鮮やかな色使い、ハンドペイントで多彩な花、葉、蝶の優美な絵付けが施され、更に金が器の縁を飾り、その華やかさは見惚れるほど美しい。

その名の由来は、英国のヴィクトリア女王。ハノーヴァー朝第6女王であるヴィクトリア(1819〜1901 在位は1837年から)が、1851年にロンドンで開催された最初の万国博覧会の会場で、出品されていたこのシリーズのディナーセットを気に入り、買い求めた事が由来とされる。その後、ディナーセットはウィンザー城で愛用され、英国貴族の間に広まったそうだ。

当時、これほど美しい器を作る技術はすごい事だったに違いない。こんな器でディナーをしていた王族、貴族の方々の生活やファッションはどんなだったのだろう、と想像が膨らむ。日常の煩雑さから逃れて、少し優雅なティータイムを楽しんだ。

器 ヴィクトリア・ブーケ カップ & ソーサー 

カップ 径9cm 高5,5cm ソーサー 径14cm 高2,5cm

作 HEREND (HUNGARY) 

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.186 トマトソース

 今年も 鱧が魚屋の店頭に並んだ。ほんの10年前、関東で鱧は季節の短い間、何度か魚屋で見かける程度だったと思う。でもここ数年、鱧は夏になると必ず有って、欲しい時に手に入る食材となった。

 ”カラマリ”というイタリア料理がある。私が大好きな料理だ。烏賊をリング状に輪切りにして、衣をつけて揚げたもの。いわゆるフリットだ。少し厚みのある衣にレモンを絞ってトマトソースをつける。冷えた白ワインとの相性が素晴らしい。何となく今日は鱧の気分で買い求めてから、白身で淡白な鱧はきっとフリットにしたら美味しいのでは、と思い付き烏賊と海老も加えてフリットを作った。

フリットを盛り合わせたのは Susie Cooper のボウル。これは以前No.33 (2021/8/13) の回で人参のラペを盛って使っているので、今日の主役はトマトソースになった。こちらも同じく Susie Cooper。フリットを盛ったボウルは、帆船の、古いタイプのバックスタンプだが、今回の器は鹿のバックスタンプなので、時代的には今回の器の方が近世のものだ。ソース入れに使ったが、この器は本来はシュガーボウル。組み合わせてソーサーにしている皿もソーサーではなく同じ柄の小皿だ。この柄でカップ&ソーサーも持っていて、ひとり用のティーセットとして購入した。朱色と黒でまるでアルファベットの ”Q” を逆さにしたような、キュートな飛び柄が愛らしい。

花柄の大きいボウルとシュガーボウル、どちらも Susie Cooper で、少し時代は違うけれど、同じ華やかな朱色が使われていて組み合わせて使うと思った通りの統一感。楽しい時間を過ごした。

器 Susie Cooper シュガーボウル(径9cm 高4cm) 小皿(径13,5cm 高1cm)

作 Susie Cooper

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.185 焼茄子

 代表的な夏野菜のひとつ、茄子。カリウムや食物繊維が豊富で、夏バテ解消にも良いそうだ。やはり旬の野菜は、その季節に身体が対応するために必要な要素が含まれていて、自然の恵みの奥深さに感動する。美しい茄子紺色の皮には、抗酸化作用の有るポリフェノールが豊富で、皮ごと食するのが効果的。とは言え今日は焼き茄子なので、香ばしく焼けた皮は外してある。我が家の焼き茄子は、白胡麻と削り鰹、おろし生姜と醤油でいただくのが定番だ。

 涼しげな空色の向付に盛った。これは、古余呂技窯 2代 川瀬 竹春のもの。六角形のフォルムが特徴的。竹春の器は、我が家のお気に入りなので、過去に何度も登場している。(No.6, 27, 51, 58, 122, 151, 152, 158) 柔らかく丸みのあるボディで、竹春の器にはよく有る、厚みの有る口の作り。そこにも黄の花と緑の葉が描かれて、食べる時に器を覗き込む目を楽しませてくれる。絵の輪郭は釘彫で掘られ、そこに青、黄、緑、白、紫の透明感のある五彩が彩っている。見込みは白磁の白で絵は無いが、轆轤でついた渦巻きが表情を加えて美しい。

器 五彩 南蛮花鳥文 向付 径13cm 高6,5cm

作 古余呂技窯 第2代 川瀬 竹春

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.184 カルピス

 今はまだ梅雨にもかかわらず、もう真夏かと思うような強い陽射しが照り付ける。こんな蒸し暑い日は甘酸っぱいカルピスが美味しい。このブログで2回目の登場となるカルピス。前回は、No.34(2021年8月20日)で、ガラス作家、江波 冨士子さんの鯛の模様のコップを紹介した。

 今年で105周年を迎えるカルピスは、1919年(大正8年)7月7日に販売が開始された。だから七夕の日はカルピスの誕生日。発売当時のカルピスはビン詰めで紙箱に入って、中身の味とはかけ離れた、まるで養命酒の様な包装だったらしい。さすがに外見と中身のギャップが有ったのだろう、1922年に瓶を爽やかな水玉模様の包装紙で包んだ形態に変わった。この水玉模様は、発売日の七夕に因んで天の川をイメージしたもの。1922年の最初の包装紙は、青地に白の水玉模様だったが、その後1949年(昭和24年)に配色を逆にし、私達の見慣れた白地に青の水玉に変わったのだそうだ。

 カルピスを作るための乳酸菌、カルピス菌は大正時代からずっと同じ菌が使われていると言う。新鮮な牛乳から脂肪分を取り除いたものにカルピス菌を加え、発酵させ、発酵することで増えたカルピス菌の一部を保存タンクに戻す、ということを続けて、秘伝のタレのようにカルピス菌を代々受け継ぎながら守っているのだそうだ。

この ”朝顔グラス” と呼ばれるガラスコップは、売り物ではなくノベルティとして作られたもの。何度も代替わりして、少し前まで作られていたらしい。調べたけれど、最後に作られたのがいつか、は解らなかった。でもかなり長い期間作られていたらしく、調べると様々な朝顔グラスが作られて来たのがわかる。

この、縦書きのカタカナロゴのこのグラスの時代は昭和の半ば頃だろうか。後半に作られたものは、ロゴはアルファベットだし、その前はカタカナでも横書き。この縦書きのカタカナはそれ以前と思われる。とても小振りで、喉が渇いている時にはこれでは足りないな、と思うけれど、シンプルでキッチュな愛らしさがある。

器 朝顔グラス  径7cm 高9,5cm

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.183 枝豆

 枝豆と冷えたビールは完璧な組み合わせで、私の夏の楽しみのひとつ。今時の表現で言うと “マリアージュ” だろうか。枝豆は豆腐や味噌の材料となる大豆と同じだが、未成熟で緑色の状態の時に収穫したものを枝豆と呼ぶ。そのまま収穫せずに成熟させ、色が枯れて乾燥したものが大豆、となる。

どちらも豆である事に変わりはないが、枝豆は生鮮食品の緑黄色野菜に分類されていて、豆類の大豆とは区別されているらしい。最近の枝豆は、大豆とは品種違いの黒豆や茶豆の枝豆もあり、更に細かく品種が別れている。八百屋の店先にも常に数種類並んでいて、どれを買おうか迷ってしまう。

美味しい茹で方には色々方法が有るけれど、私は茹でる前にたっぷりの塩で軽く揉み込み、10分程度置いてから沸騰した湯で茹でている。どちらかと言うと少し早めに上げて、歯応えが残るくらいが好み。茹でる時の湯気に枝豆の香りが強く立つ時は美味しい枝豆の印で、茹でたての熱い豆をつまみ食いする手が止まらない。

 枝豆を盛った見込みは三島、外側に刷毛目の模様の小鉢は 、第2代 清水 六兵衛(1790〜1860)のもの。江戸後期の頃の人だ。鉢は角が反って開いているので、見込みの白く浮き出た化粧土の模様がよく見える。綺麗に並ぶ可愛らしい模様は眺めていて飽きることがない。土色の釉薬に温かみのある乳白色が馴染み、優しい色合いで瑞々しい枝豆の緑が良く映える。

器 内三島 外刷毛目 角鉢  径18×17,5cm 高6cm

作 第2代 清水 六兵衛