カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.213 スペアリブ

 少し時間をかけて煮込んで、豚の甘辛味のスペアリブを作り、出汁で煮た大根と季節の縮みほうれん草を盛り合わせた。近所の八百屋でこの時期売っている徳島の大根は、包丁の歯触りが柔らかく、とても瑞々しいので薄く味付けて大根の旨味を味わいたい。野菜、特に根菜は、まな板の上で切った時の感触でその素材の良し悪しが解ったりする。いつも解る訳ではないけれど、スッと気持ち良く歯が入る時はきっと美味しいと解るので、作るのも食べるのも楽しみになる。

 見た目にもボリュームのあるスペアリブをどれに盛ろうか、と出してみたのは土肌に白い釉薬が特徴の萩のどら鉢。1600年代に始まる萩焼の名跡で、代々受け継がれる三輪 休雪 の 第11代  三輪 壽雪 の次男、三輪 英造 (1946〜1999) の作品。英造は、伯父・三輪 休和の養子となり、12代 休雪 は長男の 龍氣生 (1940〜)が継いだので、休雪を名乗る事はなかった。この鉢は10代、11代 休雪が残した “休雪白” と称される白い釉薬を掛けたもの。

 側面は内側に傾斜して見込みを抱えた形だが、縁の高さもあるので、どら鉢と呼べると思うのだけれど、箱には “皿“ とだけ記されている。因みに13代 休雪が、襲名前に本名の 和彦 の名で作った休雪白の皿は、No.52 (2021/12/24)で登場している。

さらっと掛けた白釉が土肌に透け、そのざらざらした土の質感と滑らかな白が美しいコントラストを作っている。瑞々しい生野菜を余白なく、こんもりと敷き詰め、ローストビーフや唐揚げなどを盛ってもとても映える。魯山人のように陶芸家の個性が際立つのものではないけれど、盛り付けるのが楽しい器のひとつになっている。

器 萩焼 皿  径25cm 高6cm

作 三輪 英造

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.212 寒菊

 薄っすらと雪が積ったように、白い生姜風味の砂糖がかかっている。これは『寒菊』というおかき。さくっとした食感で、甘塩っぱくて優しい味だ。おかきは2枚ずつ、菓子名の入った紙に包まれている。福岡県豊前(築上町) で、寛政年間(1789年〜1801年)に小倉藩主に献上したという伝統のある銘菓だそうだ。

 ニ段重ねの蓋物は、細かい石が混ざった釉薬を掛けていて、ざらざらした質感が面白い。表面は木版画の版を削った時のような彫刻刀の溝が変化をつけている。器本体はもう一段下に、もっと大きな高さのあるパーツが組んでいたと思われる。が、壊れてしまったのか、昔我が家に来た時には既にこの薄い円形のニ段と蓋だけだった。資料を探せば見つかるかも知れない。器は第12代 楽 吉左衛門 (弘入) と思われる。

この2段の蓋付をどう使ったら良いからしら、と迷ってお菓子を盛ってみた。下の段に寒菊、上の段にはお干菓子を盛った。暖かい部屋でお茶を淹れてこうしてお菓子をいただく、と言うのも冬の楽しみのひとつかもしれない。

器 楽 砂薬蓋物  径12cm 高7,5cm(3,8+3,8+蓋)

作 楽 吉左衛門

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.211 炊き合わせ

 白磁に、刷毛目を残して朱の釉薬を塗った、それだけなのに凛とした美しさが有る。朱の釉薬の溜まりによって、色の濃さや表面の凹凸の些細な変化が何とも言えず美しい。見込みには呉須で 『壽』 の一文字。紅白に寿、縁起の良いこの鉢は 北大路 魯山人のもの。

 プロにはとても遠く及ばないけれど、なぜか魯山人の器は素人の私でも盛り付けやすい。こんな風に盛ってみて、と器に言われているようだ。魯山人ご本人が料理を盛ることを考えて作っているからだろうが、料理をする人に広く懐を開いてくれているように感じる。

炊き合わせは、里芋に牛蒡、人参、蓮根、椎茸、高野豆腐と菜の花。お正月は甘味が強めな料理が多く飽きるので、出汁を効かせたさっぱり味に仕上げた。器と共に素材の味を楽しめるひと皿になった。

器 金襴の赤 鉢   径21cm 高10cm

作 北大路 魯山人

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.210 おせち料理

 年末に留守をしたので、出掛ける前に作り置きが出来る料理を準備しておいた。黒豆、きんとん、ごまめ、鴨。新年には、それらと紅白蒲鉾や伊達巻を 橘屋 友七 の闇蒔絵の提三段重に盛り合わせた。

 京都の塗り師、長野 横笛 (ながの おうてき)が起こした漆器店 “橘屋” (1800年初め)は、二代目の時には隆盛を極めたが、三代目が早世したために”橘屋”の屋号を、その門人だった 浅野 友七が受け継いだ。

浅野 友七 の情報は少なく、生没年は定かではないながらも1860年(万延元・安政7年)没という記述が残っているらしい。明治5年と11年の京都博覧会の記録には『浅野 友七 手道具商社 博覧会社』の名があるが、その頃には友七の子や孫が”橘屋”の屋号を継いでいて、初代の友七は幕末に亡くなっていたのだろうと推察されている。

この三段の提重は黒一色。外箱には 橘屋 友七 の名が入っている。黒漆を横に凹凸のある刷毛目に塗り、その上に黒漆で秋草が繊細なタッチで描かれている。黒に黒で闇蒔絵。しかし古い文献を探ると ”黒蒔絵” と表記されており “闇” ではなく “黒蒔絵” を正しい表記としているらしい。しかしながら ”闇蒔絵” という表現はイメージを掻き立てられて、魅力的。つい使いたくなる。

 持ち手の内側など、当たるところには擦れた跡が有り、漆の浮いている所も数箇所ある。使われた回数は判らないけれど、きっと多くの場面で料理を盛って使われて来たのだろうと感じる。今、私がこれに料理を盛って使える事に感謝したい。

器 黒蒔絵 提三段重 

径19x16cm 高21cm (上5cm 中5,3cm 下6cm)

作 橘屋 友七

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.209 プルドポークのサンドウィッチ

 以前、友人とパリとローマへ旅行した時に、ローマのフィウミチーノ空港から日本へ帰る時の事。空港でチェックインを済ませ、搭乗までに時間が有ったのでイタリアでの食べ納めに、とフードコートで食べた、ボリューム満点のサンドウィッチが長い間忘れられないでいる。熱々のポークの塊肉をカットして、パンに挟んだだけのものだったけれど、とてもジューシーで、カロリーも中々なものだった。空腹だった事もあって、最後のビールと一緒に、あっという間に食べ終えた思い出がある。あの時の、あのポークは何と言う料理だったのだろう、とずっと頭の隅に引っかかっていた。ただのグリルにしてはとても柔らかくて、不思議に思っていた。雑誌の料理のページで、このプルドポークを見つけた時、きっとあのローマの空港で食べた物に近いはず、と思った。

病院の待合室で見ていた雑誌のプルドポークは、塊肉で作るけれどそれを細かく割いてほぐして脂の部分を取り除く。だから、料理としては見た目が違うけれど、脂が無くてヘルシーで、今の私にはこの方が嬉しい。

雑誌のページはその場で写メを撮った。後日材料を用意して早速作ってみた。豚の塊肉にしっかりと塩をして、1週間置く。それを香味野菜やハーブと共に茹でてそのまま冷まし、細かくする。しっかり塩をしているのでそのままでも美味しいけれど、パンに挟むときは少しのワインビネガーやブラックペッパーを加える。ローマで食べた物と同じではないけれど、自分で作る中では一番近く、満足出来るサンドウィッチだ。

 この皿は、英国 Wedgwood (ウェッジウッド)のサンドウィッチプレート。皿自体は古い物ではないけれど、デザインはSusie Cooper (スージー • クーパー) のもの。彼女は、一時期 Wedgwood  でデザイナーとして在籍していた事がある。裏には Wedgwood の 下に “Susie Cooper Design”と明記されている。Susie Cooper の器と比べると絵柄の色使いが違い、グレイッシュなブルーやグリーンを使ってとても落ち着いた印象だ。素地の色も質感も違うから、やはり絵柄の色使いも違ってくるのだろう。繊細な細い筆のタッチで描かれたアネモネの花が美しい。

器 サンドウィッチプレート  径24x24cm 高4,5cm

作 Wedgwood Susie Cooper Design

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.208 おでん

 この季節に食べたくなるおでん。大根と蒟蒻、牛すじなど好きな具材を入れて、ゆっくり煮込んで味が沁みたおでんは身体が温まる。久しぶりに、島岡 達三 (1919〜2007) のこの皿を使った。

 若い頃、結婚して暫くした頃に、2枚だけ購入した思い出の皿。当時の月給では2枚買うのもやっと、の大きな買い物だった。ちょうど今日は結婚記念日なので、使ってみようと出してみた。この皿を買った頃は経験も浅く、いつ壊すかと使うたびにとても緊張した。思えば、器を使う楽しみはこの皿から始まったのだった、と懐かしく思う。

厚手の皿は温かみのある質感で、大らかな刷毛目に鮮やかな色で素朴な花が描かれている。益子焼の濱田 庄司に師事した島岡 達三らしい、民藝調の皿。長い年月、この皿には数え切れないほどの料理を盛って、楽しませてもらった。この先も大切に使い続けて行きたいと思う。

器 益子焼 刷毛目 赤絵草花文皿  径18cm 高4cm

作 島岡 達三

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.207 冬の果物

 冬なのに葡萄?と思ったら、いただいたこの『グローコールマン』という葡萄は、ロシアのコーカサス地方原産で、冬に収穫される珍しい葡萄だそう。日本では岡山県で生産されている。さっぱりして、酸味が少なく穏やかな甘みの葡萄だ。八百屋の店頭で真っ赤な小振りの紅玉を見つけたので、買って来た。林檎と柿と一緒に3種の冬の果物を盛り合わせた。

 手付きの器は萩焼ではないだろうか。箱が無く、本体にも銘が入っていないので、どこで、いつの時代に焼かれたものか、作者も判らない。手付きの器は、器の縁から手が出ている事が多いけれど、皿の面から手が出ているのが面白い。盛り付けに少し悩んだけれど、静物画のデッサンをしたくなりそうな、そんな盛り合わせになった。

器 手付き鉢  径21,5cm 高5,5cm (持ち手込 13cm)

作 不明

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.206 カリフラワーとアンチョビ

 今、八百屋の店先には旬のカリフラワーが並んでいる。見るからに瑞々しく、乳白色のつぶつぶした蕾が輝くように美しい。旬だけあって、大きな房でも求めやすい価格。丸ごと買って、何種類かの料理で楽しめる。

 小学生の頃、給食にホワイトシチューが有って、好き嫌いが多かった私の数少ない好きなメニューだった。そのシチューにはカリフラワーが入っていた。それが私のカリフラワーの最初のイメージで、未だにホワイトシチューにはカリフラワーを入れたくなる。

カリフラワーは、シンプルに塩茹でしてサラダでも美味しいけれど、沢山ある時はインド料理のサブジにしたり、ピクルスを作ったりする。グリルも美味しい。塩胡椒でさっぱり仕上げる事もあるけれど、今日は塩胡椒の代わりにガーリックとアンチョビを使って、とても簡単でワインにぴったりな一品にした。

カリフラワーは軽く下茹でしておく。オリーブオイルで細かく刻んだにんにくをゆっくり炒め、色がつき始める前に細かくしたアンチョビを加えて炒め、そこにカリフラワーを加える。アンチョビは塩味も旨味も強いので、これだけで味が決まる。カリフラワーでなくてもブロッコリーでも、ほうれん草で作っても美味しい。洋風の野菜料理を一品加えたい時にお勧めの料理だ。

 カリフラワーを盛った小鉢は、以前私の姉がスペインのアンダルシア地方を訪れた時に、お土産に買って来てくれた物。古い器ではなく、日常に使うようにその頃、その土地で作られていた物だ。貰って以来、気に入ってずっと使っている。外側は赤土の素焼きのままで、見込みにだけ釉薬が掛かって模様が描かれている。厚く掛かったこの白い釉薬は、スペインの焼き物には多いのかもしれない。私が昔旅行で訪れた時に買った陶器にも厚く白い釉薬が掛かっている。

外側の素焼きの素朴さと、見込みの黒を使った大らかな絵柄のコントラストが鮮やかで、何となくアフリカのデザインを彷彿とさせ、アフリカ大陸との距離の近さも感じる。

器 スペイン小鉢 径13,5cm 高5,5cm

作 不明

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.205 蕪の葉と鶏皮煮

 昨日、この冬初めて石川県の蕪を見つけた。大きく育った真っ白い蕪は葉も大きく瑞々しい。蕪を買う度に茎と葉がついてくるので、青菜として味噌汁や胡麻和えなどに使っているけれど、少し持て余してしまう時はご飯に混ぜて菜飯にしたり、ご飯のお供になりそうな、その時ある材料と一緒に煮物にして作り置きする。

今日は、蕪の茎と葉を刻んだものに鶏皮、ついでに蕪本体を剥いた皮も細く切って一緒に甘辛く煮た。冷凍庫にあった鶏の皮は、以前、もも肉を皮無しで使いたかった時に外して、脂を除いて冷凍しておいたもの。刻んだ鶏皮は先にフライパンで空炒りし、余分な脂分を出来るだけ取り除いた。こんな作り置きは、ご飯のお供やおにぎり、炒飯の具にも使ったりする。食材の副産物で作った料理も、こんな器に盛ると素敵な一品になる。

 この器は、西行法師(1118〜1190)が蔡華園院を営み、そして終焉の地であった所とされる、西行庵のもの。

調べてみると、西行庵は明治時代中頃には荒廃を極めていたが、明治26年(1893)に、富岡鉄斎が勧進文(寄付を呼びかける文)を書き、小文法師が資金を募り、当時の京都市長内貴甚三郎らの尽力により再建されて現在に至る、のだそうだ。その再建後、茶室で使われる茶碗(什器)として作られた茶碗。作者は不明だが時代は明治の前半かと思われる。

すっきりした小振りの茶碗の下部は鉄釉に白で西行庵と文字が書かれている。口周りと見込みは、いわゆる京焼の肌で、口には呉須の青、外回りには桜の花が描かれている。上品でいて気取らず、何とも愛らしい。西行庵のホームページのお茶室の動画を見ていたら、この、同じ茶碗が使われていて驚いた。

器 京焼 抹茶碗  径10,5cm 高7,2cm

作 不明

カテゴリー
Uncategorized

うつわ道楽

No.204 ホットウィスキー

 冷える夜、ホットウィスキーを作って立ち上る湯気を嗅ぐと、寒さで縮こまっていた喉元が解けるような、温かい香りがする。滅多に作る事はないけれど、時々飲みたくなる。

 このグラスは、ガラスのコップの口周りと外側に銀細工が施されたもの。今は銀が錆びて黒ずんでいるので、いわゆる銀色ではない。銀磨きで綺麗にする事は簡単だし、もしかしたら本来のヨーロッパの食卓では他の銀器と共にピカピカに磨かれて使われるのかもしれない。けれど、単体で楽しむにはこの位落ち着いた銀色も素敵かなあと思う。ガラスだから、熱湯を注ぐのではなく、別の容器で作って熱さが落ち着いてから、ゆっくりグラスに注ぐ。

 随分前にグラスをコレクションしているという方から分けて頂いたもので、作られたメーカーや年代も不明。飾り文字のアルファベットが刻まれていて、製造メーカーなのか、あるいはオーダーした顧客のイニシャルなのかも知れない。繊細だけれど力強い銀細工の葉が巻き付いている。どんな場面で、どんな人が使っていたのかしらと考えたりする。

器 銀細工 タンブラーグラス  径6,2cm 高11,5cm

作 不明