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うつわ道楽

No.272 蛤と葱のぬた和え

 毎年送っていただく桑名の蛤を、今年はどうやっていただこうかと頭を悩ます。悩む、と言ってもこんなに贅沢な悩みなんて。平和な生活が出来ることの貴重さが、近頃は身に沁みる。もう、5年も続くロシアとウクライナに続いて、今度は中東でも。今までも地域内での争い事は常にあったけれど、国と国の争いが複数起こっているという現実に危機感を覚える。

 以前仕事をしていた頃、親会社がアメリカで、度々本社のあるNYに出張に行っていた。9.11のテロの後、アメリカが仕掛けた戦争が始まり、あんなに身近だったNYへの出張に、行くか行かないかの同意を求められた事があった。私の中で結びついていなかったけれど、その時もアメリカは戦争当事国だったのだ。

若い頃は怖いもの知らずで、どこでも、ひとりでも平気で出掛けていたけれど、その頃は戦争や感染症に巻き込まれるような心配は全く感じなかった。つい、数十年前の事だ。私が歳を取ったせいもあるけれど、安全性を疑わなくてはならない事が増え、怖さを感じる。この地球はやはり何かが少しずつ変わってきている気がする。

 などと思いつつも、蛤をどう料理するかも現実の事。今まで作ったことの無かった “ぬた和え” にしてみた。蛤を酒蒸しにして身を外し、出汁で煮た九条葱と共に酢味噌で和える。酒蒸しで出来た汁も使って、蛤の風味の効いた和え物になった。

器は四つ脚の、少し高さのある古染付の長皿を使った。見込みの絵には湖で漁をする舟が浮かび、遠く向こう岸の山や、突き出した陸地か湖に浮かぶ島も見えている。呉須の色の濃淡が美しい。和え物には大きめな皿だけれど、火を通しても大きいこの蛤を盛るにはちょうど良い。

器 南京染付 長皿 5枚  径16,6×11 高3cm

作 不明