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うつわ道楽

No.276 金沢 棒鮨

 金沢へ旅した方から棒鮨が届いた。近江町市場のお鮨屋さんのもので、海老、鯖、のどぐろの三色。身が厚く、彩りも美しい。現地に行けば鮮魚のにぎりのお鮨が美味しいだろうけれど、魚を加工して、日持ちするように工夫した押寿司にはまた別な美味しさがあって好きだ。

押寿司にはふたつあると思う。京都の鯖や鱧など、海が遠く鮮魚を手に入れるのが困難だったからこそ出来たものと、この金沢の棒鮨や富山の鱒寿司のように、豊富に手に入る故にそれを日持ちするように考えたもの。どちらも今のように全国、世界どこからでも食材を取り寄せる事は出来ず、冷凍技術も無かった時代に、人が美味しい食を求めて作り上げて来たのだろう。

身の厚い鯖とのどぐろは脂が乗っていて旨みがある。海老も鮮やかな色が美しい。この棒鮨を何に盛ろうか考えた。普通に平皿に盛ってももちろん美しいだろうけれど。そこで古い文化の残る金沢を思い浮かべて、扇の縁のある器を使った。この志野織部の重厚な器にも負けず、棒鮨の存在感が際立つ。

 この扇面の器の時代と作者は不明。扇の三角形に合わせて作られた箱に納められ、その長い二辺で不均等につづら掛けに紐が掛けられている。箱もいつの時代に作られた物か、かなり古い。蓋の表に『絵志野 半開扇 肴鉢』と書かれている。

元々志野は穴窯で焼かれていたそうだ。それが次第に生産性の高い登窯が多く作られ、志野に変わって織部が焼かれるようになる。この、織部の時代に志野風のものが出来ていて、これを志野織部と呼ぶ。

穴窯で焼いていた頃の志野は、造形は簡素で厚く釉薬が掛かり、鉄釉で絵が描かれていた。が、志野織部は織部焼のように造形に凝っていて、釉薬は薄くて光沢がある。志野織部とは、織部の特徴的な緑や黒を使わない、鉄釉で描かれた絵と白釉だけの織部焼の事を呼ぶのだそうだ。なるほど、としっくり来た。確かにこの扇面も緑が加わったら織部焼そのもの。それを知るとこの器の見方も少し変わるわ。と眺めながら棒鮨を美味しく味わった。

器 絵志野 半開扇 肴鉢  径35x20cm 高5,5cm

作 不明