No.275 菜の花 (生菓子)

いつの間にか関東では桜が散り、もうすぐ菜の花の季節。今年はお天気に恵まれず、青空の下で満開の桜を見る事は出来ず残念だった。
この食籠の桜は見事だ。厚く掛かった釉薬の下に、所々桜色の土が覗く。薄い灰色の釉薬が厚く盛り上がって、花の量感と奥行きを、そしてその上に白い花が描かれていて、一本の木を覆う満開の桜の花が見える。この桜は、食籠の蓋のまるみに描かれている。そのせいで満開を迎えた木の立体感をより強く感じるのだろう。もしこれが大皿の、窪んだ面に描かれていると想像してみる。きっと印象は違うはずだ。絵画と違い、用途や形が様々にある器に描くのは、作り手にとって醍醐味がありそうだ。
作ったのは、京焼の 仁阿弥 道八 (にんあみ どうはち 二代 高橋 道八 1783〜1855)。その道八が一方堂窯で焼いた一方堂焼だ。一方堂窯は、江戸時代末期、天保年間 (1830〜1844) に京都の豪商 角倉 玄寧 が嵯峨の別荘に築いたお庭焼の窯。『一方堂』は、その玄寧の号だそうだ。道八を招いた事で、その後も道八の影響を受けた茶器や酒器を焼いていたらしい。窯の作品には 『一方堂』 の印を押していた。この食籠にも本体の裏にその印がある。もうすぐ迎える菜花の淡い緑と黄色のお菓子を盛った。

器 桜花満開蓋物 径17cm 高11,8cm
作 一方堂焼 仁阿弥 道八 (第二代 高橋 道八)