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うつわ道楽

No.305 焼秋鯖の棒寿司

 澄んだ目の、美味しそうな秋鯖を見つけて、魚屋で三枚におろしてもらった。お酢で締めた “しめ鯖” が大好きだけれど、自分で料理するなら加熱した方が安心かしら、と焼いて棒寿司にした。

 アレルギーについての研究が進み、発症するメカニズムも新たに解明されているそうだ。飲食で体内に取り込まれるだけでなく、職業柄多く触れる人は、皮膚からの吸収でアレルギーになる事が有る、と知って驚いた。更に近頃は気候変動の影響で “アニサキス” による被害も増えていると聞く。以前は、この海域の魚にはアニサキスは居ない、とされていた海も水温が上がった事で、生態系が変わって来ている。生食でアニサキスによる被害を一度経験してしまうと、加熱した魚でもアニサキスの成分が含まれているとアナフィラキシーを起こす事もあるのだそうだ。それを聞いて恐ろしくなった。

 鯖は鮮度が良いのを見て買ったけれど、そんな不安が心を過り、暫く前に見た 栗原 はるみ さんのレシピを参考にして焼鯖寿司を作った。

鯖は、半身のまま骨を取って醤油や酒、みりん、砂糖の併せたれに暫く漬けてから焼く。照り焼の要領で途中でたれを塗り、味が絡むように両面焼き上げる。大きめのラップを広げた上に酢飯を魚の大きさに合わせて盛り、大葉や甘酢生姜、白胡麻など好みで乗せ、上に皮目を上にして焼いた半身を乗せて巻く。両端をキャンディのようにしっかり巻いて、形を整える。暫く馴染ませて、ラップを巻いたまま切り分ける。

どんなお皿に盛ろうかしらと考えていて、根来の盆を思いついた。No.300で酒器を乗せた、あの盆だ。時代も作者も判らない。くり抜きで少し高めの高台が有る。見込みは根来で朱の下に黒漆が透ける。外面は濃い小豆色、高台内は黒漆が掛けられている。何を盛っても映える盆だ。

青笹を敷いて、寿司にすだちを添え、卵焼きと盛り合わせた。秋も深まり、空気が冷たく感じる。熱燗にして焼鯖寿司のお膳を味わった。

器 根来 漆盆  径26cm 高6,8cm

作 不明