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うつわ道楽

No.283 マッシュルームのポタージュ

 マッシュルームカット、とヘアスタイルの名前にもなるほど丸くて可愛らしいきのこ。私が子供の頃の髪型がこれだった。前髪を下ろして目の上で切り揃え、髪は耳の下辺りの長さだった。

でもその頃は水煮の缶詰が主流で、生のマッシュルームは見たことが無かった。その水煮の缶詰は、スライスされていていわゆるグラタンやナポリタンなどの洋食に使われていて知ったのが最初だったと記憶している。そのうちに缶詰がスーパーなどで市販され、よく見かけるようにになり、家で作るグラタンにも入るようになった。

きのこ類は、加熱するとかなり嵩が減る。水煮のマッシュルームも小さかったから、生のマッシュルームを初めて見た時は驚いた。丸くて真っ白。でも、その頃のマッシュルームはまだまだ洋食に入っている具材のひとつで、スペイン料理のアヒージョやタパスなど、マッシュルームが主役の料理は日本では知られていなかった。

 マッシュルームの原産地は、ヨーロッパの草原で、フランスやイタリア周辺の牧草地などに自生していたものがルーツとされている。17世紀中頃(1650年頃)からフランスで本格的な人工栽培が開始されたそうだ。日本には明治時代に伝わり、大正時代から栽培されていたらしい。和名は『ツクリタケ』。栽培が始まった初期の頃は『セイヨウマツタケ』とも呼ばれていたそうだ。栽培はされていたけれど、家庭で作るメニューに洋食は少なく、一般的ではなかったのかもしれない。

一年を通して八百屋の店頭にはあるけれど、きのこだから秋、と思い込んでいたら旬は4〜6月と9〜11月の2回らしい。買い物に行くと、きれいなマッシュルームがやたらに目に付き、価格も少し安い。味わいが濃いブラウンマッシュルームと白と両方買って、ポタージュを作った。トッピングにはチャイブの花を散らした。

 器は POOLE (プール ENGLND) のティーカップ&ソーサー。少し厚みのあるマットな質感が、とろみのあるポタージュに馴染む。人は急に気温が上がるこの時期に冷たいメニューを欲するらしい。冷製パスタは真夏よりもむしろ初夏に好まれると聞いた。とは言っても近頃の長過ぎる夏には、また事情が変わってくるのかもしれないなあ、と思ったりもする。あまり胃を冷やすのも考え物だけれど、冷たく冷やしたポタージュは少し胃を元気にする。

器 フラワーモチーフ カップ & ソーサー

カップ 径9,5cm 高6cm 皿 径15,3cm 高2cm

作 POOLE (ENGLAND)

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No.282 普洱茶(プーアール茶)

 北京へ旅した方からお土産に普洱茶(プーアール茶)をいただいた。団茶という形状で、葉を円盤状に固めてある。昔、仕事でよく香港や中国に行っていた頃、この団茶は見た事もあったし知っていた。けれど、それは烏龍茶や普洱茶を直径が20cm程、厚さも3cm近い大きさがあって、それが普通に中国国内で流通しているサイズだった。お茶を淹れる時はその塊を使う分だけ折って崩して使う。

私が長く訪れない間に、普洱茶もお洒落で使いやすい形態に様変わりしたようだ。奥に写る直径4,5cm、厚さ0,5cmほどの小さな円盤状で、一回分に小分けされ、それが7つ重ねられてひとつのパッケージになっている。

 普洱茶は、中国、雲南省を原産とする『黒茶(後発酵茶)』。緑茶に微生物を植え付けて発酵させて作られる。特有の熟成香とまろやかな味わいが特徴で、癖のない飲みやすいお茶だ。脂肪の吸収を抑える働きがあるので、当時ダイエット茶としてお土産にも人気があった。私も20年以上飲んだ記憶が無い。久しぶりに懐かしくいただいた。

 使った器は 第5代 清風 与平。煎茶道具を多く作っている、我が家で大好きな作家さんだ。染付や色絵で余白なく絵や文字で埋め尽くすのが特徴。お煎茶のお茶碗はともかく、茶托まで作ってしまうあたりが『清風さんらしい』と感じる。普洱茶ならこの器だわ、と注いでみた。

器 染付 煎茶碗と茶托 

茶碗 径6cm 高5,2cm 茶托 径10,8cm 高22,5cm

作 第5代 清風 与平

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No.281 ハーブ入ホイップクリームチーズ

 暫く前から気に入っているチーズクリームが有る。ホイップされているので口当たりが軽く、塩味も少ないのでクラッカーに乗せて食べるのにちょうど良い。気温上がって来た今頃に、冷えた白ワインによく合う。

プレーンなままでも美味しいのだけれど、その時の気分で鉢植えで育てているハーブを刻んで混ぜたり、レモンを絞ったりする。このチーズに合わせるのに気に入っているのはチャイブ(Chives)。調べたらヒガンバナ科ネギ属。日本のアサツキのような味や香りで、ネギ系だろうと解ってはいたけれど、ヒガンバナ科とは驚いた。フランス名はシブレット(Ciboulette)、和名は蝦夷葱(エゾネギ)とか西洋浅葱(セイヨウアサツキ)。西洋の物と思い込んでいたら、ちゃんと和名もある。フランス料理のシブレット”も聞いたことがあったけれどチャイブの事だったのか、とまたひとつ学んだ。ちなみにイタリア名はチポリーナ(Cipollina)だそうだ。

数日前にチャイブの花が咲いた。ラベンダー色の、確かに葱だと感じる葱坊主のような可憐な花。そのまま咲かせておいてあげたい気持ちもあるけれど、花も食用になるとの事なので味わってみる事にした。

 チーズを盛った器は Susie Cooper (スージー クーパー) のシュガーボウル。”Tea for two” 2人用のカップアンドソーサー、ティーポット、ミルクピッチャー、シュガーボウルのセットの中のひとつ。デザイン名が判らないのだけれど、マーガレットのような可憐な花が描かれている。バックプリントを見ると、 Susie Cooper の中では後期に作られた物と思われる。彼女の器は、いつ使っても温かみのある質感と色、絵の優しさに癒される。

器 花柄シュガーボウル 径8,8cm 高4cm

作 Susie Cooper (ENGLAND)

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No.280 キューバサンド風

 かなり前のことになるが、たまたま観た映画でキューバサンドを知った。映画は、日本で2015年に公開された米国映画『シェフ 三つ星フードトラック始めました(原題 Chef)』。三つ星シェフがフードライターに料理を酷評され、キレて騒動を起こし店を失ってしまう。収入を得るために、中古のバンを手に入れて改造。友人と10代前半の一人息子に手伝ってもらい、キューバサンドを売りながらフードトラックで旅をする、という内容だ。その美味しさがSNSで話題になり、行く先々で行列が出来る。酷評したフードライターが訪れて和解。最後はめでたしめでたしで終わる。

私が観たのは、公開から何年か経った頃だと思うが、そのキューバサンドがどうにも美味しそうで忘れられなかった。”美味しい物は身体には優しくない” を代表するかのように、たっぷりのバターにチーズ、ポークで相当なカロリーかと想像出来る。日本にもキューバサンドを提供するお店は有るけれど、映画の、あまりにも高カロリーに見えるキューバサンドに及び腰で、実は食べたことがない。だから映画の情報やネットで公開されているレシピを基に、何度か私なりのキューバサンドを模索して、今はこのオリジナルキューバサンドにそこそこ満足している。

 まずプルドポークを作る。豚の肩ブロックに塩とにんにくをすり込んで冷蔵庫で一週間置き、香味野菜と共にゆっくり煮てから身をほぐす。この時に脂身は全て取り除く。これが以前から何度も作っているプルドポークで、脂を取り除くからこの時点でかなりヘルシーな気分になる。これをバゲットに挟んで食べていた。

キューバサンドは具材を挟んでから更にパンの両面を焼く。私のレシピはバターを最小限に節約する。パンは、スーパーで買えるコッペパンの形状の”カスクート”。横に切り込みが入っているので、開いた内側、具材を挟む面をバターを溶かしたフライパンでカリッと焼く。そこにレッドチェダーチーズの薄切り、ピクルス、マスタードとたっぷりのプルドポークを挟み、フライパンに戻してフライ返しでしっかりプレスしながら両面を焼く。パンもチーズの種類もポークも自己流の組み合わせで、バターも少なめだけれど、私なりに満足のいくキューバサンドが出来上がる。

 器はPOOLE のお皿を使った。平たい見込の中央に跳ねる鹿と葉が描かれている。全体は淡い緑で、我が家にある他のPOOLEの器とはちょっと印象が違う。多分作られた年代が違うのだろう。我が家には、好んで集めるからかNo.273でクラムチャウダーを盛ったボウルのような、優しい白地のマットな質感に明るい植物が描かれた器がほとんど。でも、POOLEでこんな大きなお皿は他になく、料理を盛り合わせると楽しい器だ。

器 大皿  径26cm 高2cm

作 POOLE (ENGLAND)

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No.279 おいなりさん

 おいなりさんは、時々急に食べたくなる事がある。味の沁みた甘塩っぱいお揚げに酢飯。それだけなのに、なぜあれほど美味しいのだろう。以前、京都に行った時には寄るおうどん屋さんがあった。うどんと丼物のお店だけれど、なぜか京都はそんなお店の店名はどこも “○○餅” 。発祥は餅屋だったのだろうか。 “○○餅” と名の付くお店は古くから地元に根付いたお店で、観光客の多い繁華街ではなく住宅の多い地域。昔よく行っていたそのお店も、近所の方が気軽に食べに来るお店で、ご家族でやっていた。

京都のおうどんは、讃岐系のコシのある麺とは違ってあまり太くなくて柔らかい。もちろんうどんも美味しいのだけれど、私はそこのおいなりさんが特に気に入っていた。サイドメニューの位置付けで、三角の小さめのおいなりさんが2つ、甘酢生姜と一緒に小皿に載ってくる。酢飯には白胡麻が入っていた。

そのお店がしばらく前に閉店し、そのおいなりさんも食べられなくなってしまった。残念に思っていたら、京風のおいなりさんで使う正方形の油揚げを見つけて、作ってみようと思い立った。

おいなりさんはこれまでも作った事があるけれど、お揚げを煮て味を染み込ませるには結構な手間がかかる。せっかちに作るせいか、思っているおいなりさんが出来たことがなかった。でも、今回はレシピ通りに手間をかけてお揚げを煮て、お店の味には届かないものの、そこそこ満足の行く味が出来た。

つい欲張って酢飯を詰め込んで、大きめのおいなりさんになったけれど、お店をイメージして敢えて小さめのお皿に盛ってみた。使ったお皿は箱に『土器皿』とある。永楽 妙全 のものだ。5枚組で、赤っぽい土に鉄釉でそれぞれに絵がわりで描かれている。土器の名の通り高台は無く、丸い板を皿の形に窪ませた素朴な作り。使った皿には太い枝の向こうに寺院の塔のような建物が覗いていて、京都の風景が思い浮かぶ。

器 土器皿 五枚組  径 14cm 高2,5cm

作 永楽窯 永楽 妙全